オンライン診療のイノベーター「ネクイノ」がもたらす、医療DXの未来
-INNOVATOR INTERVIEW- 石井健一 (株式会社ネクイノ/代表取締役)

▼メディコネクトが進める日本の医療DX

出村:12月にリリースされたメディコネクトについても詳しくお聞かせ下さい。

石井:現在の日本の医療保険制度は、患者さんのデータがローカルの医療機関に置かれている状態に部分最適された仕組みになっているんですね。そのため、例えば結婚や離婚、就職や転職などによって医療IDが変わり、データがさまざまな場所に分散してしまうと都合が悪いんです。かつて話題になった「消えた年金問題」もこの課題に原因がありました。その後日本では、マイナンバーという番号を国民全員が持たされるようになり、ここにあらゆるIDを統合していこうとする動きが加速しています。こうした流れの中、医療IDをマイナンバーに紐づけ、転勤や引っ越しなどによっていきつけの病院が変わったりしても支障なく医療を受け続けられたり、ローカルのデータに依存しない医療計画を立てられるようにするために、メディコネクトを開発しました。

出村:メディコネクトは具体的にどんなサービスになるのですか?

石井:メディコネクトは、ユーザーが簡単かつ安全な方法で、マイナンバーカードと健康保険証をリンクさせて、各医療機関で共用できるサービスです。コロナ禍の給付金にまつわるマイナンバーカードの申請対応のために、各自治体は膨大な人的コストを費やしましたが、こうした紐づけの作業をスマホアプリ上で患者さん自らが簡単に行えるようにしようというのがメディコネクトの発想です。メディコネクトではマイナンバーと健康保険証の情報を統合して新しい「鍵」を発行するのですが、顔認証技術を用い、本人の生体情報によってそれを行っている点が特許技術になっています。

マイナンバーと健康保険証をつなぐ「メディコネクト」

 

出村:今後メディコネクトをどのようなステップで広げていこうとお考えですか?

石井:まずはマイナンバーカードと健康保険証をリンクさせ、鍵を発行する作業が最優先になります。その上で、医療機関や企業、自治体などとも連携し、一人ひとりのユーザーがメディコネクトを使うことでハッピーになるということを実感して頂くことが大切だと思っています。また、コロナ禍における世界の流れにこのサービスを乗せていくことが社会実装への最短距離だと考えています。すでに日本でも医療従事者のワクチン接種が始まっていますが、ワクチンの接種予約や履歴の管理にメディコネクトを活用していける仕組みなどを自治体とともにつくり上げていきたいですね。

▼イノベーションとは社会実装すること

出村:知財図鑑では世界を進化させるイノベーターたちを応援していますが、石井さんが考えるイノベーションとは何ですか?

石井:イノベーション=社会実装だと思っています。私たちは車や電車、飛行機などを日常的に使うことができますが、宇宙用ロケットの場合はそうはいかないですよね。月に行けるロケットの開発というのは大きな技術革新であることは間違いないですが、こうした技術を社会実装することで初めてイノベーションになると考えています。

出村:イノベーションを生み出すために大切にしていることがあれば教えてください。

石井:最先端の技術を入れないということを意識しています。例えば胃カメラなど、日本からは世界最高水準の技術が色々生まれているのですが、一歩引いて見ると医療領域全体が社会から遅れているところがあるんです。医療の世界にクラウドという概念が入ってきたのも世の中からは10年くらい遅れていましたし、電子決済、電子マネーなどもいまだ実装に至っていません。こうしたフィールドにおいていきなりAIやブロックチェーンなどの技術を導入しようとすると、アレルギー反応が起きやすいんです。だからこそ、すでに社会実装されている技術をカスタムし、サービス化していくことがイノベーションへの近道だと思っています。

出村:最後に、これからコラボレーションしていきたいプレイヤーなどについてもお聞かせください。

石井:今後医療DXを進めていくにあたって、まずはリアルの現場にいる人たちとの関係性を深めていくことが何よりも優先すべき課題だと考えています。医療機関や自治体との連携を通じて、デジタル保険証や診察券という形でメディコネクトが使える未来をつくっていきたいですね。また、従業員のデータを保有している企業立病院などとのコラボレーションを進めていくことも、メディコネクトを広げていくための重要なステップになると考えています。

TEXT:原田優輝 (Qonversations)

プロフィール

石井健一   Kenichi Ishii
株式会社ネクイノ

薬剤師・経営管理学修士(MBA)。1978年生まれ。2001年帝京大学薬学部卒業後、アストラゼネカ株式会社入社。2005年からノバルティスファーマ株式会社にて、医療情報担当者として臓器移植のプロジェクトなどに従事。2013年関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科院卒業。2013年医療系コンサルティングファーム株式会社メディノベーションラボの代表取締役を経て、2016年株式会社ネクイノ(旧ネクストイノベーション株式会社)を創設。医療機関の経営改革や新規事業開発が専門領域。

関連企業

株式会社ネクイノ

インターネットを用いた遠隔医療サービスの企画及び運営を行い、世界中の医療空間と体験をRe▷design(サイテイギ)するメディカル・コミュニケーションカンパニー。優れたテクノロジーとUXを「コミュニケーション」を軸に活用し、イノベーションを起こしている。生理や避妊で悩む患者と医師をオンライン上で直接つなぎピルを届ける「smaluna(スマルナ)」や、マイナンバーカードと健康保険証をリンクさせるサービス「メディコネクト」を運営。

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