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2021.03.11

知財ニュース

地震の予知は可能か—「海底ケーブルで地震を早期検知する技術」を米学術誌が発表

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引用元: https://unsplash.com/

2011年3月11日に発生した東日本大震災。巨大津波や原発事故など、誰も経験したことがない未知の複合災害は関連死を含めて全国で約1万9600人の命を奪い、未だ2528人の行方が分かっていません。そして、2021年2月13日には再び東北地方を強い揺れが襲い、福島県・宮城県の一部では震度6強を観測。この地震で津波や大きな被害はありませんでしたが、震災の記憶を呼び覚まし再び強い緊張が走りました。

災害大国の日本において、地震の予知・伝達の技術の確立は緊喫の課題でありながらも、未だ現実的な実施には至っていません。気象庁による緊急地震速報も震源に近いところでは速報が間に合わず、また、ごく短時間のデータだけを使った速報であることから、予測された震度に誤差を伴うなどの限界があるのが現状です。

そんな中、アメリカ科学振興協会が発刊している学術誌『Science』にて「海底ケーブルで地震を早期検知する」という技術が発表されました。海底ケーブルとは大陸や島々をつなぐために海底に敷設された通信ケーブルのことを指し、総延長は地球30周分の長さに達すると言われており、世界の通信ネットワークに欠かせない存在といえます。

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カリフォルニア工科大学のZhongwen Zhan助教授らが発表したのは、追加の機器を設置することなく、すでに海底に設置されている既存の光ファイバーケーブルだけで地震を検出するという手法。Zhan助教授らは、カリフォルニア-チリ間を結ぶGoogleの私設海底ケーブル「Curie」を利用し、2019年12月から2020年9月にかけて転送された光パルスの「ゆがみ」を測定。地震が発生した際には、海底ケーブルがまるで引っ張るかのように光パルスに偏光が生じると確認しました。(Scienceより)

Zhan助教授らによると、Curie周辺における5~10ミリヘルツ帯の地震波・水波の検出ならば可能で、すでに中規模から大規模の地震20件やメキシコ・オアハカ州南部で発生したマグニチュード7.5の地震の検出に成功したとのこと。また、「海上の嵐が生み出した大波までをも検出した」としており、地震だけでなく津波の検出にまで転用可能だと語っています。既存の光ファイバーケーブルを活用するので、専用の装置を各所へ設置していく必要がなく、低コストで観測が可能になるのが特徴です。

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Zhan助教授は、発表時点では地震の発生地点を検出する精度に難があると認めつつ、今回の技術が追加の機器を要しないためデータの改ざんや機器盗難などのリスクはないと主張。「今回の技術が既存のシステムに影響を与えることなく社会的利益を高めることができる」と述べて、今後は検出精度の向上やノイズの削減に注力する予定だと語りました。

この研究がうまくいけば、世界各地の海底に次々と高度な地震観測スポットが出現し、地震予知が可能になっていくのかもしれません。この技術により海に囲まれた島国であるこの日本においても、地震予知の研究開発がさらに活性化していくことが期待されます。

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