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2023.12.08
知財ニュース
東芝、コバルト不使用の新リチウムイオン電池を開発─レアメタル不使用、充放電6,000回超、2028年の実用化へ
東芝は11月28日、コバルトフリーな5V級高電位正極材料を用いた、新たなリチウムイオン二次電池を開発したと発表した。安定供給やコスト変動などの課題を抱えるレアメタルのコバルトを使わず、電極の構成部材を改良することで、5V級高電位正極の活用に伴うガスの発生を抑制。3V以上の高電圧を持ち、6,000回以上の充放電に対応する高性能なリチウムイオン二次電池を開発した。
リチウムイオン電池の正極を安定させる性質を持つコバルトは、EV用電池などに広く用いられてきた。しかし、生産国が限られることから安定的な調達が難しい。そのため昨今、コバルトフリーの5V級高電位正極の開発が進められてきた。
従来技術では、作動電位の高さゆえに電解液が酸化分解しガス化するため、電池の膨張や寿命が短くなるといった課題があった。シンプルにガス発生を抑制しようとすると電気抵抗が上がり、電池性能が低下する。実用化に向けていくつかのハードルがあった。
東芝はまず、電解液が分解されてガスが発生するのは高電位正極の表面であることや、正極材料に含まれる金属が溶出して負極表面でガス発生を促すといったメカニズムを解明。それを踏まえ、正極の粒子表面を改質して電解液との反応を抑える技術と、溶出した金属を負極表面で無害化する技術を開発した。同技術を用いて5V級高電位正極を構築し、高電圧と高性能を兼ね備えたリチウムイオン二次電池を実現している。
開発技術の実証には、ニオブチタン酸化物(NTO)負極を採用し、1.5Ah級のラミネート型電池を試作。性能評価では、3V以上の高電圧や、5分間で80%充電できる急速充電性能、充放電を6,000回以上繰り返しても初期の80%以上の容量を維持する耐久性、60℃の高温環境にも対応する高温耐久性を実証した。
同電池の実用化は、2028年を予定。東芝はまず、小型で高電圧が必要な電動工具や産業機器などへの展開を検討し、将来的には、電気自動車への展開や電池の大型化を目指す。今後の技術開発の進展により、幅広いアプリケーションでの活用が期待される。
Top Image : © 株式会社 東芝