No.1067

大阪・関西万博

2025.08.21

人とロボットの融合で拡がる生命の未来を体現したパビリオン

いのちの未来

いのちの未来_top
© FUTURE OF LIFE/EXPO2025

概要

「いのちの未来」とは、人間とロボットの共生や融合で、人の生命の可能性が拡がる未来を体現したパビリオン。日本古来の「モノにいのちを宿す」歴史、人とテクノロジーが共存する50年後の近未来、技術発展の先にある1000年後の人の姿という3つのゾーンを通じて、人とロボットの境界がない世界を体感できる。大阪・関西万博のパビリオンの1つで、テーマは「いのちを拡げる」。約30体のロボットやアバター、「いのち」と向き合う物語、未来のシナリオなどにより、身体・時間・場所の制約を超えた人の在り方や未来社会を具現化した。水のベールに覆われた建物も特徴。人の「いのちとは何か」、生命の可能性を拡げる科学技術を「未来に向けてどう発展させるか」などを考える機会を提供し、未来創造を後押しすると期待されている。

IMG 5963 Photo by 知財図鑑

いのちの未来_sub1 © FUTURE OF LIFE/EXPO2025

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IMG 5937 Photo by 知財図鑑

IMG 5939 ゾーン2「50年後の未来」 Photo by 知財図鑑

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© FUTURE OF LIFE/EXPO2025

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DSC08236 ゾーン3「1000年後のいのち“まほろば”」 Photo by 知財図鑑

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なぜできるのか?

生命観の考察を深める3つのゾーン構成

「いのちの歩み」「50年後の未来」「1000年後のいのち"まほろば"」の3つのゾーンを展開。ゾーン1では土偶・埴輪などから現代のアンドロイド(人間そっくりのロボット)まで、モノに「いのち」を宿してきた日本の歴史を振り返り、未来を臨む構成にしている。メインのゾーン2では、人とアンドロイドの共生や、未来の技術・プロダクトを活用する生活を具現化。ストーリー性のあるシナリオで、50年後の人の在り方や社会を体感できる。1000年後の世界を描いたゾーン3では、科学技術の進歩で自由に姿を選べるようになった未来の人類像を提示。人とテクノロジーが融合し、身体の制約から解き放たれた人の姿に出会える。

アンドロイド・ロボットによるパビリオン演出

約30体のロボットが展示の演出や案内で登場する。様々なクリエイターや企業が集い、ロボット開発やデザイン、演出などを担当。物語展開を担う人間のようなアンドロイド「ヤマトロイド」(大人型)と「アスカロイド」(子供型)は、エーラボが万博に合わせて開発した。人間らしい表情を実現するため、目・口・舌などを早く自然に動かす機構を開発。滑らかな身体動作で未来の世界を表現する。3種類の移動型ロボットも登場し、障害物を避けながら自律走行して来館者を導く。さらに、電気通信大学と東京電機大学の研究グループが開発した、操作者の表情も再現する遠隔操作型アンドロイド「Yui(ユイ)」など、現存のロボットも複数参加。刻々と進化し続ける科学技術を体感できる。

ロボット・アバター技術の研究開発

ロボット工学やアバター(遠隔操作で動くロボット・CGキャラクターなどの総称)といった、石黒プロデューサーが長年取り組んできた研究開発がベースにある。人間らしいアンドロイドやミニマルデザインのロボット、遠隔操作、自律対話など、多様なアプローチで研究を推進。人の生命や「存在感とは何か」を探りながら、人間社会を支えるロボットの研究開発を進めている。また科学技術振興機構(JST)の研究開発事業として、「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」に向けたプロジェクトを展開。育児・介護・療養中などで時間・空間的に制約がある人でも、アバターを通じて社会活動に参画できる状態を目指している。代表を務めるAVITAでは、アバターやAIを活用したサービスを提供。アバターによる接客や問い合わせ対応など、複数企業で導入実績がある。

未来のプロダクトアイデア・シナリオの創造

50年後の社会と生命の在り方を考察する「いのちの未来共創プロジェクト2025」を立ち上げ、アイデアをパビリオンに取り入れた。プロジェクトは2021年に発足。協賛企業7社(長谷工コーポレーション、コクヨ、塩野義製薬、シスメックス、全国介護事業者連盟万博コンソーシアム2025、デンソー、阪急阪神ホールディングス)を中心にミーティングを重ね、「未来プロダクト」のアイデアを創造した。生み出されたアイデアの一部を、シナリオ制作メンバーが「50年後の未来」で展開するシナリオに活用してブラッシュアップ。感情移入から自律的な考察にいざなう、ストーリー性のある「未来シナリオ」を構築した。

生命の起源「水」を基調とした建物デザイン

無生物と生物を結びつける“水”と、生命の多様性をもたらす“渚”をモチーフに建物をデザイン。滝のような水のベールが外観を覆う、水景を活かした建物を実現した。水との相性や物理的観点などから外装に黒い膜材を採用し、ポリ塩化ビニールと炭素繊維メッシュ膜で2重構成の「水膜」を制作。高さ12メートルの建物外壁を膜で覆い、屋上から水を流して循環させる仕組みを構築した。水のベールは膜上で砕けて白い水泡になり、渚のような風合いを見せる。来館者は水のベールをくぐり抜け、「いのちの未来」と向き合える。

パビリオンを彩る多様な技術

光の演出に堀場製作所の計測技術を用いた。パビリオン外構のオブジェと滝壺に20台以上の水質計を備え、出口の天井付近には大気計を設置。水と大気の微細な変化をリアルタイムで計測して光に変え、「進化の渚」を表現している。また、パビリオンを巡る際に使う端末とイヤホンは京セラが提供。端末は新しい“臓器”をイメージしてデザイン。骨伝導型のスピーカーユニットとバイタルセンサーを内蔵したイヤホンを組み合わせて、インタラクティブな体験を提供する。イヤホンは“新しい感覚器官”をイメージしたデザインで、音声伝達だけでなく来館者の状態をセンシングできる。そのほか、ローカル5GやLED、物語を彩る照明演出、香料による五感の刺激など、多数の技術をパビリオンに組み込んでいる。

相性のいい産業分野

教育・人材

STEM教育・倫理教育の教材やロボットの技術研修などに活用

メディア・コミュニケーション

会社や事業の枠を超えた共創プロジェクトモデルとして横展開

ロボティクス

プロトタイプや開発技術のテスト・検証の場として提供

IT・通信

アバター接客の実践の場として企業向けサービスを展開

アート・エンターテインメント

イベント・アート展示・舞台などの演者にアンドロイドを起用

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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協働メンバーや協賛企業の詳細はこちら
(下記は一部抜粋)

■いのちの未来 プロデュースチーム

プロデューサー:石黒 浩 大阪大学大学院基礎工学研究科 教授(栄誉教授)
企画統括ディレクター:内田 まほろ 一般財団法人 JR東日本文化創造財団
制作統括ディレクター:小林 大介 株式会社 パルコ
建築・展示空間ディレクター:遠藤 治郎 合同会社 SOIHOUSE
バーチャル空間プランニングディレクター:宇川 直宏 現“在”美術家|DOMMUNE 主宰

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Top Image : © FUTURE OF LIFE/EXPO2025