No.1093

2025.11.28

鋼鉄に匹敵する強度を持つ木材

スーパーウッド

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概要

「スーパーウッド」とは、鋼鉄に匹敵する強度を持つとされる木材。2013年にメリーランド大学の研究チームが、「木材をナノスケールで加工し、鋼鉄、ガラス、スポンジのような性能を持つ材料を作り出すことは可能だろうか?」というシンプルな疑問から、この木材の開発を開始した。天然木よりも4~20倍の強度と剛性を備え、耐圧性と耐火性も大幅に向上している。鋼鉄と同等の強度を持ちながら、6倍の軽さで、鋼材よりも軽く、破壊に要するエネルギーは天然木の約10倍に達するという報告もある。また、鉄鋼生産に比べて、製造過程における炭素排出量は90%の削減が可能とされており、炭素排出量を大幅に削減できる可能性があるとされている。

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なぜできるのか?

従来の天然木材よりも最大20倍の強度で、耐圧性と耐火性も大幅に向上した木材

生産工程は、木材の硬さと褐色を形成するリグニンを除去し、熱で圧縮する。これにより、セルロース繊維が高密度になり、穴や節などが押しつぶされる。最後に塗装を行って完成される。この圧縮では、木材は元のサイズの5分の1の薄さになる。木材の繊維が非常に強く圧縮されているため、まるで身動きが取れない多くの人々が手を握り合っているかのように、強力な水素結合を形成する。その結果、天然木よりも4~20倍の強度と剛性を備え、耐圧性と耐火性も大幅に向上している。この木材素材と天然木に弾丸のようなものを撃ち込むテストが実施され、天然木でははまっすぐ貫通したが、スーパーウッドは弾丸を途中で止めた。自動車、飛行機、建物など、鉄が使用されるあらゆる用途への使用が期待されている。

最小限のメンテナンスでの使用が可能

従来の木材に比べてメンテナンスは最小限で済む設計。屋外での使用には、定期的な清掃または再仕上げが推奨されている。

メリーランド州フレデリックの工場で生産、鉄鋼と同等のコスト実現に期待

現状、高級かつ持続可能な素材として位置付けられているが、生産量が年間3,000万平方フィート以上に拡大するにつれ、鉄鋼などの従来の建築資材と同等のコストを実現できると見込まれている。メリーランド州フレデリックの工場で生産しており、需要の急増により、2025年の生産は満杯、新規注文の受付開始は早くても2026年以降となっている。また、技術については144件の特許を出願済みで、そのうち41件が認可・承認されている。

相性のいい産業分野

生活・文化

長く愛用できる家具や、雑貨への展開

流通・モビリティ

車内コンソールや内装パネルなどに使用し、脱プラの推進

製造業・メーカー

木材を使用したモビリティの開発

住宅・不動産・建築

木材を利活用した高層ビルの提供

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © InventWood