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2022.04.12
知財ニュース
nendoが国際ハンドボール連盟の公認球「d60」をデザイン、吸着力の高い60個の三角形で構成したパネル構造
佐藤オオキが率いるデザインオフィス nendoは、国際ハンドボール連盟(IHF)認定公式球となる競技用ボールなどを製造・販売する株式会社モルテン(molten)によるハンドボール試合球「d60」をデザインした。
さまざまな種類のスピンをかけたパスやシュートを行うハンドボールでは、ボールのグリップ力が重要なため、粘着力の高い「松ヤニ」が使用される。一方、この松ヤニが体育館の床を汚してしまったり、松ヤニのベタベタで床が滑って怪我の原因になることもあり、その対応が検討されてきた。
これらの課題を解決し、競技人口をさらに増やしていくために、IHFからの要望に基づき「松ヤニを使わなくてもグリップ力のあるボール」が開発された。
「タイヤの溝」や「ヤモリの足の裏」など、吸着力を高める表面テクスチャーのリサーチが行われた結果、機械のスイッチや工具のグリップ部分などに使用される「ローレット加工」の考え方を参考にした、60個の三角形で構成したパネル構造が考案された。
パネルとパネルの継ぎ目の盛り上がり部分は硬く設計し、パネルの中央部は柔らかくすることで、その「段差」が握りやすさを生み出している。さらに、従来は五角形と六角形が混在していたパネルをすべて三角形にすることで、ボールを握った際のバランスを均等にすることができた。
また、パネルの接合は、これまでの手縫製からパネル同士を接着する組み立て方法に変更し、より精度の高い形状が安定して製造できるようになったとのこと。表面素材には、手の汗を多孔質な表面が吸い込むことで吸着する性質をもった合成樹脂を採用。ベタつきが少ないために汚れにくく、しっとりとした独特の触り心地をしている。
こうして誕生したこのボールによって、今後ハンドボールというスポーツがより安全かつ平等で、多くの子供たちにも開かれた競技となることを期待したい。
Top Image : © 有限会社 nendo