「新規事業は必ず生み出せる」──東京都「GEMStartup TOKYO」、大企業発・新事業創出のイベントを開催

東京都の新事業発掘プロジェクト「GEMStartup TOKYO」は、2026年7月8日(水)、Tokyo Innovation Base(千代田区丸の内)にて機運醸成イベント『大企業発・新事業創出の「リアル」と「突破口」』を開催した。大企業等の民間企業で培われたノウハウやアイデアを起業や新事業創出に結びつける同プロジェクトは、今年度で7年目を迎える。当日は新規事業家®の守屋実氏による基調講演と、大企業発ベンチャーの実践者らによるパネルディスカッションが行われ、会場とオンラインのハイブリッド形式で実施された。
「原石を宝石(GEM)に」─68社・125名が参加するエコシステム

冒頭、東京都産業労働局 商工部創業支援課の土肥悠樹氏が開会挨拶に立ち、「民間企業の中で眠っているアイデアを、専門家の力を借りながら事業化・起業につなげることが本事業の目的」と趣旨を語った。

続いてGEMStartup TOKYO事務局の松本武士氏が事業概要を説明。同プロジェクトは、体系的な知識習得を目指す「新事業創出プラットフォーム」、事業の立ち上げやカーブアウト創出を狙う「事業化プログラム」、企業内で新規事業を生む仕組みづくりを支援する「連携モデル」の3つで構成される。昨年度は68社・125名が参加し、起業家・VC・士業など44名のメンター・講師陣が支えるエコシステムが形成されているという。松本氏は「我々事務局自身もインキュベーターであるという思いで、生み出すことにコミットする」と2年目への意気込みを述べた。
基調講演:99%が陥る共通の罠と、壁を壊す「意志」の力
基調講演には、38年にわたり社内起業17・独立起業25・週末起業15の計57事業を立ち上げてきた新規事業家®・守屋実氏が登壇。「新規事業は必ず生み出せる。ただし99%が同じ間違い方を繰り返している。同じ間違いをしなければ、必ず生み出せる」と40年弱のキャリアで培った持論を述べた。

守屋氏によれば、新規事業は「十中八九うまくいかない」ものだが、それは裏を返せば「十中一二は必ずうまくいく」ということでもある。勝ちに近づく問いとして挙げたのは「顧客と価値は何か」「初客はどう太客に育つのか」「儲けのカラクリはあるか」の3つ。一方、負けに近づく最大の要因が「本業の汚染」だという。本業と新規事業は本来異なるものであるにもかかわらず、大企業では予実一致を求める事業計画、定期人事異動、単年度会計といった本業の論理が新規事業に持ち込まれてしまう。守屋氏はこれを野球とサッカーに例え、「サッカーグラウンドにバットとグローブを持っていくようなもの。まず前提から違うんだということを認識してほしい」と会場に呼びかけた。
そのうえで、会社全体を変える必要はなく、役員・ミドルリーダー・メンバーの3層に一人ずつ理解者がいれば大企業の強みを生かした挑戦ができると説き、「人は人に影響を受ける。コミュニティの力は必ず事業の躍進につながる」と、参加者同士のつながりを促した。
パネルディスカッション:検証で終わらせない出口戦略と日々の推進力
後半のパネルディスカッションには、東レ株式会社から社内初のD2Cプロジェクトをスピンオフさせた MOONRAKERS TECHNOLOGIES株式会社 代表取締役/CEOの西田誠氏、東京海上日動から出向起業モデルで創業した株式会社Carjany 代表取締役の渡邊裕太氏、守屋氏の3名が登壇。松本氏がファシリテーターを務め、「組織ハック」「日々の推進」「出口の設計」をテーマに議論が交わされた。

経営層の巻き込みについて、渡邊氏は「クルマ選びの変革というビジョンだけでは経営層と話をしなかった。本業の経営課題を解決する手段としてこの事業をやる、というストーリーで巻き込んだ」と明かす。保険業法の制約で社内での事業テストができなかったため、知人のスタートアップに自らの事業案を試してもらい、約2,000人の消費者を獲得した事実を携えて社内を説得したという。

西田氏が強調したのは、PDCAの実行(Do)を小さく素早く始める「スモールDo」だ。BtoB企業の東レでBtoC(消費者直販)事業を提案した際は経営層に大反対されたが、在庫を持たないクラウドファンディングでの実験という「スモールDo」の承認を得て、プロジェクトを開始。誰も知らないブランドのコートが1か月で約1,700万円を売り上げ、「消費者という援軍」を得て事業を軌道に乗せた。「大企業は失うことに敏感で、夢では動かない。誰も反対しないレベルのスモールDoで先に結果を出すこと」と語る。さらに撤退ラインの重要性にも触れ、「3年で黒字化の目処がつかなければやめると経営陣に約束した。役員も背中を押してくれました」というエピソードを紹介した。

両氏に共通するのが「出向起業」という仕組みの活用だ。渡邊氏は東京海上日動の社員身分を持ちながら外部資本で会社を経営し、「大企業では失敗しないプランづくりに半年かけていたが、今は考えるよりもやる。失敗は選択肢を研ぎ澄ますためのプロセス」とマインドの変化を語った。西田氏はさらに踏み込み、3年間の期限付きで復職の権利を残す「一時退職起業」を選択。「大企業の既存事業と異なり、新規事業ではやったら潰れるかもしれないが、やらなくても潰れる。平均2週間(20,000分)かかる大企業での稟議では間に合わない。だから社長である自分が20分で決める。決断のスピードは大企業の1,000倍」と独立環境の利点を述べた。守屋氏は「東レと東京海上だけが特別なのではない。抽象度を上げれば2人の話はほぼ同じで、どの会社にも適用できる。よそ様の話ではなく、我が社ゴトとして持ち帰ってほしい」とまとめた。
クロージングで守屋氏は「人は考えたようにはならない、行動したようになる。刺激を受けたら必ず一つ動いてみてください」と参加者に行動を促し、イベントは登壇者と参加者の交流会へと続いた。大企業等に所属しながら新事業創出に挑みたいという人は、ぜひGEMStartup TOKYOのWebサイトをチェックしてほしい。
Top Image : © GEMStartup TOKYO事務局
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