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2021.02.18

知財ニュース

宇宙に浮かぶお寺…IoT衛星を搭載した宇宙寺院「劫蘊寺」2023年離陸へ

劫蘊寺 1

10都道府県で緊急事態宣言が延長されるなど、冬を迎え再熱している新型コロナウィルスの感染拡大。今年は初詣に行けず、すっきりしない心持ちの方も多いのではないでしょうか。

そんなコロナ禍で話題となっているのが、お寺を宇宙に打ち上げる「宇宙寺院」計画です。京都を拠点に人工衛星開発などを行っているベンチャー企業「テラスペース」が、京都にある真言宗醍醐派總本山の醍醐寺とともに「人工衛星による宇宙寺院の開発と打ち上げ」を行うべく提携すると発表しました。

2023年の打ち上げを目指しており、高度400km〜500kmの地球低軌道を約1時間半で周回する予定の宇宙寺院の名前は、「浄天院劫蘊寺(じょうてんいんごううんじ)」。仏教用語で”劫”は極めて永い時間の流れを、”蘊”の字は人間の存在そのものを示す要素を意味します。

この宇宙寺院には地上のお寺と同様にご本尊や曼荼羅などが祀られます。醍醐寺は真言宗なので、ご本尊は大日如来像。大日如来はすべての生物の根本であり、真言密教では宇宙の真理、また宇宙そのものの象徴とされます。

小型の人工衛星とは言え、お寺が宇宙に浮かぶ時代がくるなんて…スケールの大きさに驚きです。日本の伝統文化であるお寺と最新の宇宙技術の融合は、なんだかロマンを掻き立てられますね。

ツライことや苦しいことの多い世の中ですが、空を見上げて宇宙寺院に手を合わせるだけでも、ほんの少しなりと心が穏やかになるかもしれません。

ちなみに、劫蘊寺の位置はモバイルアプリで随時確認できるようにする予定とのこと。宇宙寺院に向かって手を合わせたつもりが、その時刻のお寺は地球の裏側、ブラジルの皆さんの頭上の上だった…なんて失態を回避できます。

劫蘊寺のIoT衛星としての役割

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劫蘊寺が注目されている理由はこれだけではありません。なんと、劫蘊寺にはIoT衛星としての実用的な機能も搭載されているのです。

IoT衛星とは、地上や海上のセンサー類からのデータを受信して、ネットワーク化するための通信衛星のこと。たとえば自動運転車や無人船舶のセンサー群が収集したデータや、河川や水路の水位・雨量監視データ、野生動物の行動把握のためのデータなどを吸い上げて、地上の基地局へと中継する衛星システム。

劫蘊寺の場合は、山間部の施設に保管される文化財の保護のためのデータ収集といった用途に用いるのだそう。はるか天空から大日如来の目が行き届いていると思えば、盗人もおいそれと手は出せないことでしょう。

携帯電話の電波も届かず、なかなか情報を集めにくい山間部。そこにある貴重な重要文化財を守る役割も持つ劫蘊寺は、私たちの生活に欠かせない存在になるのではないでしょうか。

なお、劫蘊寺は宇宙全体の平和、そして宇宙における人類の活動の安全を祈願する「宇宙法要」を定期開催していくと発表。その第1回は2月8日に開催され、醍醐寺の壁瀬宥雅 執行長ら15名が出席し、成功を祈る法要が営まれました。

醍醐寺の仲田順英 統括本部長は「宇宙から見た世界には国境も人種も無く、様々な人たちが心を寄せてもらう場所にしていきたい」と話しています。宇宙に人類が進出する時代だからこそ、心の拠り所となるこういったプロジェクトが今後も広がっていくことを期待します。

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