【SXSW2021】 『midiglue』/東京大学発のスタートアップ・プロジェクト「Todai To Texas」全6チームインタビュー

34年の歴史上、初の完全オンラインとなった世界最大のテクノロジーとカルチャーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)Online 2021」。昨年の新型コロナウイルスによる中止を経て、今年は5日間に渡るオンライン開催によって画期的なXRコンテンツの数々を自宅から体験できるという異色の開催となりました。

東京大学発のスタートアップ・プロジェクト「Todai To Texas」からも個性の異なる6つのチームが出展。それぞれのチームにオンラインにてインタビューを行い、プロジェクトの概要と技術の先に思い描く未来について聞きました。全6回に分けてお届けします。

https://www.sxsw.com/

今回ご紹介するのは「sigboost」チームが開発した電子楽器のコントロールボックス『midiglue(ミディグルー)』。CEOでありジャズピアニストでもある、青木海さんにお話を伺いました。

●Profile
sigboost株式会社は2015年未踏採択プロジェクトを経て、2018年に東大と筑波大の学生により創業。テクノロジーによってアーティストの創造性を刺激し、音楽文化を拡張することを主なミッションとして活動を続けている。

電子楽器の演奏法を拡張させるコントロールボックス
「midiglue」

midiglue(ミディグルー)とは、MIDI・USB-MIDI・CV/GATEなど様々な電子楽器のコントロール規格に対応し相互変換やルーティングを可能とする、sigboost株式会社が開発した次世代のコントローラー&エフェクトユニットです。

●このプロジェクトの開発の背景について教えてください
私たち「sigboost」はプログラマブルな電子楽器を作っているメーカーです。世の中の電子楽器というのは、それぞれ単体で見ると非常に完成度の高いものばかりですが、一方でそれ以上の拡張性はなかったり、他の楽器と横断して音を鳴らすことが困難だったりと、アーティストの思い描く本当のビジョンの音が必ずしも作れるものばかりではありません。自分でやりたい音楽表現がある、しかしそれができる楽器がこの世に存在しない、そんな問題を解決するためにmidiglueは開発されました。midiglueはこれ単体で音を鳴らすものではなく、他の電子楽器を制御し、連携させることに特化したコントローラーでありエフェクトユニットです。言うなれば、楽器側ではなく人間側を拡張するような製品です。

●この技術の特徴や強みについて教えてください
midiglueは様々な電子楽器を連携させたり、MIDI(電子楽器の演奏データを機器間で転送・共有するための共通規格)にエフェクトをかけることができるコンパクトなコントロールボックスです。シンセサイザー、MIDIコントローラー、モジュラーシンセやドラムマシン、電子ピアノや電子ドラムを、お互いに接続したりルーティングしたり、エフェクトをかけたりして、より楽しく・面白くコントロールすることができます。例えば、古いアナログシンセやヴィンテージマシンは音自体はユニークなものが多いのに、規格の拡張性がなく現代の電子楽器と連携できないものがほとんどです。しかしmidiglueを使えば、異なる信号を相互に変換し繋ぎ合わせ、様々なケースに対応します。そうすることでアーティストは今までになかった演奏方法が選択肢として増え、新しい表現が生まれていきます。また、変換やルーティングだけではなく、シンセの指定された鍵盤のみにドラム音を割り当てたり、一つの鍵盤に複数のコードを割り当てたりと、これまでの楽器を進化させ演奏を拡張する機能とプリセットもmidiglueには数多く搭載しています。

●今後、どのような領域のパートナーと協業したいですか?
midiglueは現在、第一回目の生産ロットを終えて第二回目の生産を目指していますが、まだまだ生産の母数自体が少ないため市場に出回る数も限られています。まずは使用してくれるユーザーを増やすために、大量生産を請け負っていただけるクライアントはもちろん、midiglueを必要としてくれるアーティストにリーチできるPR力を持つ方と協業できると嬉しいです。また、midiglueは電子音楽の制御に特化したものですがMIDI自体は汎用的な規格なので、ビデオ信号をコントロールする映像制作の現場や、照明の制御においても活躍できるかと思います。

●この技術を生かし、どのような未来をつくりたいですか?
アーティストには様々なタイプがいて、そこにある楽器をストイックに使い込んで表現をつくりあげる人もいれば、その人の中にすでに音のビジョンがあって、それを叶えるための楽器や手法を逆算的に探すというタイプのアーティストもいます。midiglueは特に、そうした後者のアーティストの方の欲求を満たすことを想定して開発しました。アーティストの好奇心をくすぐり自由に想像力を働かせてもらい、未だ聴いたことのない面白い音楽を数多く世の中に生み出してもらうのが私たちの目標です。

〈編集部コメント〉
各メーカーがそれぞれ唯一無二の音を目指し楽器を研究・開発する一方で、それらを相互に連携させることでアーティストの発想をより自由にしようというオープンな思想のこのmidiglueは、奏者と音楽ジャンルの可能性を無限に拡張できる可能性を持ったデバイスだと感じました。古い規格にも対応することでオールドな電子楽器を蘇らせるという点も、新旧を相乗させるサンプリング精神に溢れています。新進気鋭の10代のシンセ奏者と熟練のピアノ奏者によるmidiglueを介したセッションなど、世代や機材を越境した新たな音楽が生まれそうです。

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