【SXSW2021】『AI Painting Project』/東京大学発のスタートアップ・プロジェクト「Todai To Texas」全6チームインタビュー

34年の歴史上、初の完全オンラインとなった世界最大のテクノロジーとカルチャーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)Online 2021」。昨年の新型コロナウイルスによる中止を経て、今年は5日間に渡るオンライン開催によって画期的なXRコンテンツの数々を自宅から体験できるという異色の開催となりました。

東京大学発のスタートアップ・プロジェクト「Todai To Texas」からも個性の異なる6つのチームが出展。それぞれのチームにオンラインにてインタビューを行い、プロジェクトの概要と技術の先に思い描く未来について聞きました。全6回に分けてお届けします。

https://www.sxsw.com/

今回紹介するのは、Suzuvreチームの「AI Painting Project」。チームリーダーのYiru Laiさん、アートディレクターのJiamin Panさんに話を伺いました。

●Profile
「Suzuvre」は、日本IBM、ヤマハ発動機、東京大学など様々なバックグラウンドを持ったメンバーによって構成されたチーム。オープンイノベーションの文脈を踏まえ、アート、AI(深層学習、強化学習)、CAD、機械工学など、所属にこだわらず必要とされる様々なスペシャリティを持つ人々が枠を超え集い活動している。現在進行中のプロジェクトであり、最終的には人間のように自らテーマを考え、筆を取り、表現していく「創造する主体」の開発を目指している。メンバー(50音順):高濱修輔/邱昊翔/潘嘉敏/本江巧/松原海人/森國秀/山口勇二/頼伊汝

自律的に絵画を生成するAIロボット
「AI Painting Project」

人が与えた「Kimono」「Mask」「Hotdog」などのテーマを元に、ディープラーニングで画像学習したAIが自発的に絵画を作成するアーム型のロボット。独自のアルゴリズムに沿って色の組み合わせや構成、ブラシストロークをAIが選択し、オリジナルなアート作品を描くことができる。

●このプロジェクトの開発の背景について教えてください
Jiamin Pan:クリエイティブの可能性を更新することが本プロジェクトの目的です。自発的にアート活動を行うAIロボットにより、人の営みには存在しなかったアート表現が生まれるか、絵画がどのように変遷し得るかを探求したいと考えています。

Yiru Lai:このプロジェクトは8人からなるチームなので、ジョインのタイミングやきっかけは少しずつ異なりますが、私がこのプロジェクトの着想を得た原点はシド・ミードの描いた∀ガンダムに登場するターンXの分離した腕部です。本でこの腕部のデザインを見たときに、自分でもなぜかはわかりませんが「ロボットアーティストがルーヴル美術館で絵を描いている」というビジョンが浮かびました。これに限らず、未来をバックキャストして、こういう世界が訪れるとワクワクするという感覚はいつも大切にしています。

●この技術の特徴や強みについて教えてください
Jiamin Pan:AIを活用して絵を描く事例は既に存在します。しかし、インプット画像や動画データを単に変換したのみの作品も多く、それらは機械が自発的に描いているとは言えないものです。私たちはそこの壁を超えたいと思っていて、AI Paintingではある単語を与えるとAIがデータセットから自発的に調色や配色、軌道、ストロークのニュアンスを選び絵を生成するプロセスをつくっています。AIと機械に作品のアウトプットを委ねるアンコントローラブルな自律性が特徴だと思います。

Yiru Lai:このプロジェクトの根底にあるのは、機械やAIで人間のクリエイティブを代替したいということではなく、グッドテクノロジーによって人間の創造性を拡張したいという思いです。例えばカメラの発明が絵画の写実主義に影響を与えたように、テクノロジーによって新たなアートの流派や手法が生み出せるのではと考えています。AI Paintingはそういった未来の表現領域の可能性を秘めているのではと思います。

●今後、どのような領域のパートナーと協業したいですか?
Yiru Lai:現状では、テーマを与えてからロボットが描き終わるまで外界からのフィードバックはなく、描いている途中で推敲する営みがありません。ゆくゆくは描いている間に自発的に機械が思考し、タッチや作品の方向性を変えていけるというプロセスの実現を目指しています。例えば、ロボットアームのカメラが途中経過のフィードバックをよりセンシティブに読み取ることができる技術を持ったプロフェッショナルと協働したいです。自然言語を高レベルで処理するという意味では、同じくTTTチームとしてSXSW2021に出展した「Sōseki」チームのAIとは何かコラボレーションができるかもしれません。あとはハードウェアのデザインをより洗練させたり、何より大きな美術館で展覧会やライブペインティングができるようになるといいですね。

●この技術を生かし、どのような未来をつくりたいですか?
Jiamin Pan:AIロボットが独立したアーティストとして、自由に作品のテーマを設定し、表現手法を探求していくのが目標です。人の価値観から離れ、ロボット自身が作風を構築できるようになると、これまでにない表現体系が生まれ面白いに違いありません。ダイバーシティをより広く、AIやロボットも包含していくことで、クリエイティブがより多様で豊かになるのではないかと想像しています。

〈編集部コメント〉
インタビュー中の「上手くストロークができず、失敗した時の作品の方が魅力的な場合が多い」というコメントが印象的なように、完璧な制御ではないゆらぎを持ったAIの需要が今後高まっていくのかもしれません。同じシステムでも機械によって作風や個性が異なるAIアーティストが登場したり、また、描いている最中にリアルタイムにAIが思考するテクノロジーが実現すれば、人間のアーティストとコラボレーションしたライブ・ペインティングが実現しそうです。

「Todai To Texas」HP