No. 013 透明人間になれる光学迷彩技術

再帰性反射材

この知財は、リアルタイムまたは事前に撮影した背景映像を再帰性反射材に投影することで物体が透明に見える効果を表現する。背景が簡単なモデルを作成し、プロジェクタの位置での視点映像をIBR(Image-based Rendering) によりリアルタイムに生成しているため、背景画像をそのままプロジェクターから投影する従来手法で課題となっていたずれを大幅に改善している。一般的なARの領域では、現実空間にバーチャル空間の映像を加算する方式が多いが、この技術のように映像の減算による演出効果は表現の可能性を飛躍させるだろう。

なにがすごいのか?

  • 再帰性反射材の特性を利用し、対象物があたかも背景に溶け込んでいるように見える
  • 『攻殻機動隊』の世界に登場した、いわゆる「熱光学迷彩」を再現したとして話題になった
  • 現実世界の情報を“減算”する手法により、本来「見たい」と思うものに注視させる

なぜ生まれたのか?

立体視ディスプレイの研究を元に、立体映像を使って物体を周囲の風景に溶け込ませることで、その物体を視覚的に透明に見せる技術として開発された。対象人物の背景をリアルタイムで撮影し、その映像をプロジェクターで人物上に立体映像で投影。しかし、平面ではない箇所に投影すると映像が歪んでしまうこと、単に背景を投影しただけでは透明には見えないこと、また、周囲が明るいと映像自体が見えなくなることなどが課題となっていた。
そこで、入射した光を散らすことなくまっすぐに反射する性質の「再帰性反射材」を利用することでこれらの課題を解決。この再帰性反射材で作られたマントを使うと、投影した光や色が乱反射せず見る側に直接戻ってくるため、平面ではないマントの上であっても、周囲の明るさも関係なく、対象物の背後の立体映像をマントの上に明確に映し出すことが可能となった。こうして、世界を熱狂させた「熱光学迷彩」が現実の世界に誕生した。

妄想プロジェクト

消える首都高速

日本橋のランドマークである橋の上にかかる高速道路の地下化が計画されているが、頭上に高速道路のない日本橋の姿はなかなかイメージが難しい。消える首都高速は、そんな日本橋の側面に再帰性反射材の幕をかけることで、高速道路が“消えた”日本橋の風景をシミュレートするという妄想。
工事の完了まで待たずとも、街を行き交う多くの人に開放的な景色を提供できるうえ、未来の日本橋の街並みに大きな期待と関心が寄せられるだろう。

なぜできるのか?

光透過層とハーフミラー層からなる再帰性反射材

再帰性反射材は光透過材料から形成され、一方の面に再帰性反射面が形成された微小なビーズ状のガラスなどから成る光透過層と、再帰性反射面側に配置されたハーフミラー層とを備えている。

映像を明確に表示するため、光透過率の調節が可能

ハーフミラー層は金属蒸着により形成することが可能であり、蒸着時間の長さなどにより、ハーフミラー層の光透過率を調節することができる。

ヘルメット・マウンテッド・プロジェクタ(HMP)の原理を応用した投影装置

プロジェクタ装置を使用者の眼の位置に対して共役な位置に配置し、対象となる物体の画像を投影し、投影した画像をコンバイナを介して再帰性反射面に映し出す投影装置。(例えば、ヘルメット・マウンテッド・プロジェクタ(HMP))

相性のいい分野

エンターテインメント
屋内でのコンサートや観劇時における、会場内環境による視界の差を低減
医療
肉眼では視界が遮られる部位の手術を行う際、視界確保の一助として活用
モビリティ
自動車や飛行機、船室の内装に用いることで、周囲の風景を楽しみながら移動
建築
住民の視界を遮る位置に建築物を建てるときに、従来と同様の景観を保持
アート
2Dでのトリックアートやだまし絵の世界を、3Dで圧倒的な臨場感を持って再現

知財情報

主な知財ホルダー:国立大学法人 東京大学、稲見昌彦

・特開2008-015359:「再帰性反射材、投影装置、航空機、および航空機用シミュレータ」

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。

知財ハンター

荒井 亮 Ryo Arai
Producer / Konel Inc.

1977年東京都荒川区生まれ。立教大学社会学部産業関係学科卒。クリエイティブ会社にてライブ配信事業のプロデューサーとして番組の企画制作、各種アライアンスやチームビルディングを担当。その後、Konelに所属し「日本橋地下実験場」を中心としたプロジェクトに関わる。聴覚を拡張するプロダクト『PlayEar』の開発や、インターネット世代のポップカルチャー、メディアアート、ペットテック領域に関心がある。