No. 086 地球のための高性能計算機

Earth Simulator(地球シミュレータ)

「地球シミュレータ」(*1)は、地球規模のシミュレーションを行なうベクトル型並列スーパーコンピュータ(スパコン)。地球規模の膨大なデータの統合や数値解析を行うことで、地球惑星システムや生態系、さらには人間社会や経済を含むあらゆるシステムについて科学的知見を深めることに大きく貢献する。将来的には、火山活動・気候変動・地層地殻変動といった自然現象に潜むメカニズムの理解、地震発生や津波被害の予測、政策決定支援などにおいて威力を発揮すると期待される。

(*1) 特に本記事では、2021年3月に運用開始予定の、第4世代地球シミュレータ「次期地球シミュレータ(仮称)」を取り上げる。

なぜできるのか?

過去世代を凌駕する「マシンスペック」

NVIDIAとNECの技術(NVIDIA Mellanox HDR 200Gb/s InfiniBandネットワーキング、NVIDIA A100 TensorコアGPU、NEC SX-Aurora TSUBASA(*1))を組み合わせることで、過去世代の地球シミュレータを大幅に超えるスペックへの改良に成功(第3世代の15倍以上の性能、同程度の電力消費量、半分程度の設置面積)。高速かつ大規模なシミュレーションと研究の発展が促進される。

(*1) 「SX-Aurora TSUBASA」:カード型ベクトルエンジンを多数搭載した省電力なサーバ。メモリー帯域が1.53TB/sと大幅に向上したのが特徴。膨大なメモリに頻繁なアクセスが必要な計算では、「富岳」に用いられるMPU「A64FX」の約1.5倍のベンチマーク性能を示す。

刷新された「マルチ構成」によりAI(人工知能)やビッグデータ処理性能を強化

ベクトル型計算機は、単一コア当たりの演算性能の高さが特徴で、地球環境や自然現象など多数のデータを同時に扱う大規模な計算に向くが、近年ますますニーズの高まっている「深層学習」などの用途ではGPUによる計算の方が高い性能を得られる可能性があった。そこで、「地球シミュレータ」では過去世代の「SX-ACE」を中心とした単一構成から刷新。「SX-Aurora TSUBASA」684台に加え、スカラー計算機としての性能を増強する米AMDのサーバー向けx86マイクロプロセッサ「EPYC」を導入。さらに、米NVIDIAのGPU「A100」を組み合わせたマルチ構成とした。

相性のいい分野

SDGs
環境変動の未来予測から逆算することで、ブレイクダウン型の行動方針を市民に発信する「今年/今月/今日できること」
防災
起こりうる自然災害シミュレーションや被害規模予想を、YouTuber・VTuberといったインフルエンサーと協同しながら、動画プラットフォームでわかりやすく発信
エンターテインメント
プレイヤーの行動選択でさまざまな未来のシナリオが現れる、環境対策啓蒙のためのシリアスゲーム

知財情報

主な知財ホルダー: 国立研究開発法人海洋研究開発機構 (JAMSTEC) / 日本電気株式会社 (NEC)

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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知財ハンター

小髙 充弘 Mitsuhiro Odaka
Media Artist / Konel Inc.

1991年生、神戸出身。学士(医学,理学)。広義の「感染」に関するメディアアート制作を行う。病原体、行動、モラル等が、複雑に跨ぎ合うつながり構造の上を拡散・極性化する現象に関心がある。その関心の下で、データによる予測可能性を超えた逸脱的な意味付けの内部に人間が人間たる規定要因を探したり、疎外された逸脱主体と他との交流の回復がありうるのか探ったりしている。