No. 198 マイクロ単位で硬い金属を加工する極小の"稲妻"

放電加工(electrical discharge machining; EDM)

放電加工は、硬い金属を精密かつ複雑な形状に加工する技術。ドリルによる切削加工が難しい硬い金属を、放電による火花の熱で切り取るため、切削加工と違って材料に接触することなく加工できる。1965年に旧ソ連で発明されて以来、進化し続ける放電加工は、金型や医療機器、航空機の精密な部品などの加工に欠かせないものとなった。”稲妻”のような放電によって、切れ目すら認識できないほど精密に切られた部品同士が美しく合わさる様から、芸術品としての価値も注目されている。

ワイヤー放電加工の様子

数マイクロメートルしか隙間がなく切れ目の見えない金属

なぜできるのか?

高硬度金属を溶かす6000℃の火花

電極と被加工物の間には短い周期でアーク放電(電位差によって導電性のない気体や液体中に電流が流れる現象)が繰り返される。アーク放電による火花は6000℃に達し、切削では加工困難な金属をも溶かす。

被加工物の導電性を利用

電極と被加工物との間に発生する放電によって、被加工物の切除対象部分が除去される。こうした除去加工の特性から、被加工物が電気を通す材質であれば、どんなに硬い材料でも加工の対象となる。

放電によって起こる液体の気化爆発

放電加工は、イオンを取り除いた水や油といった絶縁性のある加工液の中で行われる。液中で放電が発生すると、加工液に気化爆発が起こって気泡が生じ、溶け出した材料を吹き飛ばす。被加工物の表面には爆発による極小のクレーター状のくぼみができるため、ザラザラとした仕上がりになる(研削などを行うことで表面粗さ、精度ともにより精密に仕上げることも可能)。

放電加工の種類

放電加工にはいくつかの種類があり、その中でも主となるのが、ワイヤー放電加工と形彫り(かたぼり)放電加工である。ワイヤー放電加工は、直径約0.02~0.35mm程度の真鍮製などのワイヤー線を電極として使い、放電による火花で金属を削り取る。形彫り放電加工は、銅やグラファイト等を電極として使い、放電による火花で金属を掘るように加工し、電極の形状を加工する金属に転写する事ができる。

相性のいい分野

セキュリティ
超高精細で複製の困難な鍵
インテリア
放電加工でブロック表面に目立たないスイッチを彫り込み、この「スイッチを同化させたブロック」を同じ材質の壁に埋め込むことで、隠しスイッチ(あるいは存在感のないスイッチ)を含む壁をつくる:「カメレオン・スイッチ・ウォール」
デバイス
人体に組み込める超小型ナノデバイスの部品

知財情報

主な知財ホルダー:株式会社ソディックほか

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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知財ハンター

小髙 充弘 Mitsuhiro Odaka
Media Artist / Konel Inc.

1991年生、神戸出身。学士(医学,理学)。広義の「感染」に関するメディアアート制作を行う。病原体、行動、モラル等が、複雑に跨ぎ合うつながり構造の上を拡散・極性化する現象に関心がある。その関心の下で、データによる予測可能性を超えた逸脱的な意味付けの内部に人間が人間たる規定要因を探したり、疎外された逸脱主体と他との交流の回復がありうるのか探ったりしている。


知財ライティング: 都淳朗