No. 273 声質を再現するハンズフリーの人工喉頭

Syrinx

「Syrinx」とは頸部のがん治療による後遺症や失声症などにより声帯機能を失ってしまった人々が、自らの声で再び会話することを可能にする電気式人工喉頭。振動子により装着者の喉を震わせ、口の動作に合わせて音を作ることができる。従来の、無機質で単調な音声しか作れなかった人工喉頭と異なり、AI技術を用いたアルゴリズムにより装着者の声の特徴を学び反映した音声出力が可能に。首に装着するハンズフリー設計と操作のしやすさ、日常に溶け込むデザインにより、声帯に困難を抱える人々の日常生活におけるコミュニケーションの活性化が期待できる。

東京大学大学院のメンバーが中心となり研究・開発。声帯を摘出し、声を失った人に対し社会復帰を支援している社団法人「銀鈴会(ぎんれいかい)」の協力の元、実際の電気式人工喉頭使用者の意見を取り入れながら製作された。イノベーティブなアイデアやテクノロジーを競う、2020 Imagine Cup 世界大会に「Team Syrinx」として出場し、準優勝を獲得。

なぜできるのか?

装着者の声の特徴を学ぶAI技術

Microsoft AzureのAI技術による独自のアルゴリズムを用いて装着者の本来の声質を学び、よりその人の声や話し方の特徴を反映した自然な音声パターンを作製。

左右で異なる2種類の振動子

首に装着した左右のうち一方は従来と同タイプの振動子、もう一方はより高い周波数の音声出力が可能な振動子を搭載。これにより、これまで単調で無機質であった音声に幅広い声域と抑揚を出すことが可能となった。

ハンズフリーでストレスフリーな設計

従来の電気式人工喉頭は先端に振動子の付いた円筒形のデバイスで、喉に押し当てて使うことから常に片手が塞がった状態だった。そこでSyrinxは振動子を首に固定できるウェアラブルデバイスとしてデザインし、両手が空いた状態でのストレスフリーな会話を実現した。

スタイリッシュで豊富なカラーデザイン

公共の場で付けていても悪目立ちせず、むしろ会話のきっかけとなるようなスマートなビジュアルに加え、多彩なカラーバリエーションをラインナップ。デバイスのカバーは簡単に交換可能で、使用者の好みの色に気軽にカスタマイズすることができる。

相性のいい分野

医療
声帯に障害や後遺症を負った人のリハビリテーション
教育
言語の発育にハンディキャップのある児童の学習や交流のサポート
コミュニケーション
発声が困難な人の喉の震え、体の一部の動きをアルゴリズム化することにより意思を伝えるメッセージデバイス
ヘルスケア
健康状態の自分の声質を日常的にデータベース化することにより身体の異常や疾患の早期発見

知財情報

主な知財ホルダー:東京大学/Team Syrinx

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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知財ハンター

加藤 なつみ KatoNatsumi
Assistant Producer / Konel Inc.

群馬県富岡市出身。信州大学感性工学科主席卒業、イノベーション教育プログラムi.school修了生。人が持っている感性や想像力を引き出すものづくりを志し、プロダクトからサービスデザインまで、幅広く仲間と活動中。日本文化や美意識、感覚拡張、自然界の仕組みに高い関心がある。


知財ライティング: 松岡真吾