No. 282 雷雲由来の高エネルギービーム検出デバイス

中性子モニタ

(c) 2019 Teruaki Enoto

中性子モニタとは、雷雲での光核反応によって生じるガンマ線や中性子のパルス波形を検出できる小型軽量装置。従来、雷雲は限られた地点でしか観測されていなかったが、ポータビリティに優れた中性子モニタを使うことで複数地点でのマッピング観測が簡便となり、雷雲から放たれるガンマ線や中性子に関する多くの情報を記録できるようになった。雷雲の発生する仕組みを解く鍵として期待されるほか、水分で散乱されやすい性質を持つ中性子を観測できることから、非接触水分検出器としての応用も検討されている。

学術系クラウドファンディング「academist」による研究紹介(出典元:https://youtu.be/ZgQLdRz2pBE)

雷が発生する謎を解くべく、日本海沿岸で冬季に発生する強力な雷の研究をしていた理化学研究所の榎戸輝揚氏は、雷が電子の反物質である陽電子を出すことを発見。この発見をまとめた論文は世界トップレベルの学術雑誌「Nature」に掲載された。

なぜできるのか?

雷雲からのガンマ線や中性子の観測

中性子モニタの観測対象は、雷雲からの高エネルギー放射線である。雷雲はその内部に、電子や陽電子が高エネルギーに至るまで加速する特殊環境を持っている。加速した電子は大気分子と衝突すると(光核反応)、ガンマ線や中性子のビームを外部に放出させる。中性子モニタは、この“天然の粒子加速器”からビームが放出される瞬間を狙って、常時観測を行っている。

IoT化による多地点常時モニタリング

雷雲の多地点観測データを効率的に集めるため、中性子モニタは超小型コンピュータ「Raspberry Pi」でインターネットに接続されている。このIoT化技術によって、国内でも有数の雷発生地点である石川県能登半島や福井県若狭湾にて、雷雲からの高エネルギー放射を常時観測できるようになった。

※日本海側で冬季に発生する雷雲は世界的にみても電気エネルギーが大きく、雲の高度も低いため、普通はほとんどが大気に吸収されてしまうはずの加速された電子やガンマ線が地表まで届きやすい。

相性のいい分野

インフラストラクチャー
腐食した配管に貯まる水分の検出
宇宙
月面探査車(ローバー)に搭載することで月面の水資源を探査
アート
雷が放つパルス波形の軌跡を用いた、自然が作り出す絵画
エネルギー
雷のエネルギーを保存する技術と組み合わせた、雷由来の蓄電池

知財情報

主な知財ホルダー: 榎戸輝揚 – 理化学研究所 / 京都大学 白眉センター

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。

知財ハンター

小髙 充弘 Mitsuhiro Odaka
Media Artist / Konel Inc.

1991年生、神戸出身。学士(医学,理学)。広義の「感染」に関するメディアアート制作を行う。病原体、行動、モラル等が、複雑に跨ぎ合うつながり構造の上を拡散・極性化する現象に関心がある。その関心の下で、データによる予測可能性を超えた逸脱的な意味付けの内部に人間が人間たる規定要因を探したり、疎外された逸脱主体と他との交流の回復がありうるのか探ったりしている。