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2021.12.22

知財ニュース

害虫の飛行パターンを予測しレーザー狙撃で駆除―農研機構が開発、2025年の実用化目指す

害虫の飛行パターンをモデル化し3次元位置を予測

独立行政法人農研機構は11月29日、飛行する害虫の位置をカメラで検出し、リアルタイム画像の飛行の軌跡から飛行パターンをモデル化し、害虫の位置と飛行を予測する方法を開発したと発表した。予測された位置をレーザーで狙撃し駆除する、新しい害虫防除システムの開発が期待できるという。

研究では、対象害虫として、代表的な農業害虫の「ハスモンヨトウ」(ガの一種)の成虫を2台のカメラを並べたステレオカメラで1秒間に55回のペースで撮影。これにより得られる飛行の軌跡を3次元の位置情報で計測し飛行パターンをモデル化した。カメラでハスモンヨトウを検出するまでに0.03秒のタイムラグが生じており、このままではレーザーは命中しないため、数ステップ先(0.03秒先)の位置を1.4cm程度の精度で予測できる手法を新たに開発した。

害虫の飛行パターンをモデル化し3次元位置を予測

現在、世界の食料総生産の15.6%が害虫により損失を受けているといわれており、害虫防除は食糧の安定的な生産のための重要な課題となっている。しかし、開発した殺虫剤を使い続けることで害虫に農薬が効かなくなり、殺虫剤が使えなくなる現象が起こっているという。ハスモンヨトウのように薬剤抵抗性を発達させた種も現れており、化学農薬主体の防除法から脱却するための新規防除技術の開発が急務となっている。

代替技術として提案されているのが、レーザー照射による害虫狙撃である。この技術は、化学農薬のように使うほど効果が低下する心配がなく、農作物や環境への負荷も少ないことが期待される。2025年までに、本手法で予測した位置にレーザーを照射し害虫を駆除する技術の実用化を目指しているとのこと。将来的には、車両やドローンなどの無人移動ロボットなどに搭載し、人的労力ゼロで害虫などによる被害を抑制する技術基盤となることが期待されている。

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Top Image : © 農研機構

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