No.1065

Tech Direction Awards受賞作品

2025.08.22

文化祭づくりをアップデートする、高校生による実践型DXモデル

SCHOOL IN WONDERLAND

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概要

「SCHOOL IN WONDERLAND」とは、東京都立田園調布高校 73期3年D組が2024年の文化祭で行ったクラス企画。「不思議の国のアリス」の世界をモチーフにした没入型アトラクションで、2人乗りのカートで移動しながら、教室全体に施されたミニゲームやジェットコースター的な演出を楽しめる。制作にあたっては、3DCGなどによる完成イメージの共有や進捗管理用アプリの構築・展開などで、全体の進行をマネジメント。また、アトラクションに大量の板を要したが資材高騰で調達が困難だったため、同時期に行われていた都知事選の掲示板の再利用を発案した。テクノロジーとアイデアで費用を抑えながら、例年にない大規模なクラス企画を実現。クラス全員で進行する環境づくりと大掛かりな企画を具現化する文化祭の手法として、横展開やさらなる進展が期待される。

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なぜ生まれたのか?

2024年9月13日~14日に開催された田園調布高校の文化祭「ぽろにあ祭」で、73期3年D組がクラス企画として実施した。同校では、毎年9月頃に「ぽろにあ祭」を開催。1年生から3年生までのクラスと部活動単位で、催しを企画・制作している。

なぜできるのか?

完成イメージの視覚的な共有

クラス全員が完成形をイメージできるよう企画内容を視覚化して説明し、ビジョンを共有した。説明には、「LiDARスキャン」とオープンソースの3DCGソフト「Blender」を活用。カート乗車者の目線で体験できる内容をビジュアル化したり、教室のどの位置に何を配置するかを示したりと、口頭説明だけではイメージしづらい企画内容を視覚的に伝えた。作業開始後は各部門から挙がった希望をCGに落とし込むなどして、イメージを更新しながら制作を進めた。

全員が主体的に関われる進捗管理ツールの構築

作業進捗や選挙ポスターの掲示板を管理するため、「Googleスプレッドシート」と「Google Apps Script」(ローコードの開発プラットフォーム)を用いてWebアプリを構築した。アプリのスプレッドシートで、クラス全員が進捗状況を閲覧・編集できるようにして、リアルタイムの進捗共有やデータ更新を実現。文化祭準備で起こりがちな、「何をすればいいのか」「どの作業をしているのか」が分からなくなるといった事態を防ぎ、クラス全体が能動的に参加できる環境を整えた。

選挙ポスター掲示板の再利用

大量の板の調達にあたり、テクニカルマネジメント担当のメンバーが、「東京都知事選挙2024」のポスター掲示板に着目。文化祭の資材はこれまで、クラスに分配された生徒会費で購入していたが、物価上昇などで資材調達が難しかったため、掲示板の再利用を発案した。大田区の選挙管理委員会に提供を申し入れ、知事選終了後に区内36カ所分・72組を無償で譲り受けた。入手した掲示板は校内でシェア。アトラクション制作には20枚以上を用いて、完成度を高めた。また、ポスターが貼られた状態の掲示板を活用する中で、自然に政治や選挙の話題になり、関心を持つきっかけにもなったという。再利用の取り組みは複数メディアで取り上げられた。

相性のいい産業分野

教育・人材

文化祭・学園祭づくりのモデルケースとして全国各地の学校に展開

アート・エンターテインメント

学生イベントや地域の祭りなどでプロジェクト推進に活用

IT・通信

学校行事をサポートするITツール・プラットフォームの開発

官公庁・自治体

選挙の掲示板やイベント用資材などをリサイクルできるプラットフォームの開発

製造業・メーカー

持続的な活用を想定したイベント資材の開発

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 東京都立田園調布高校 73期3年D組