News
2023.11.30
知財ニュース
ispace、月のレゴリスを採取する小型月面探査車のデザイン公開─2024年打ち上げ予定
株式会社ispaceは、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション2において、最速2024年冬に月に輸送予定である、欧州子会社が開発するマイクロローバー(小型月面探査車)の最終デザインを公開した。
このミッション2で使用されるランダーモデルを新たにRESILIENCE(レジリエンス)と命名した。「RESILIENCE」は、日本語で「再起」や「復活」「回復」等の意味を持つ。ミッション2に向けて欧州子会社であるispace Europeが開発を進めているマイクロローバーは、高さ26 cm、幅31.5 cm、全長54 cm、重さ約5 kg (※)。
ミッション2の目的は、ミッション1で得た成果を踏まえた月着陸船(ランダー)の設計・技術、月面輸送サービスおよび月面データサービスの提供という事業モデルの更なる検証と強化。ispaceが中長期的に目指すシスルナ(cislunar: 地球と月の間)経済圏の構築を推進する上で重要施策となる、資源探査の初期的な取り組みを自社開発のマイクロローバーを中心に実施する。
マイクロローバーはランダーの上部にあるペイロードベイに格納され、月面着陸後に展開機構を用いて月面への着地と走行のための展開を行う計画。軽量かつロケットの打ち上げ等の振動に耐える頑丈性を実現するために、躯体にはCFRP(炭素繊維複合材料)が採用されている。
ローバー前方にはHDカメラが搭載されており、月面上での撮影が可能。月面の特殊なレゴリス環境でも安定した走行ができるよう、車輪の形状が工夫されている。更にローバーの前方にはHAKUTO-Rのコーポレートパートナー企業であるEpiroc AB社が開発するスコップを搭載し、月のレゴリスを採取し、ローバーに搭載したカメラで採取物の撮影を行う計画だ。
ミッション2では、マイクロローバーを使用して月のレゴリスを採取し、その所有権を顧客であるNASAに譲渡する、NASAとの月資源商取引プログラムを実施する予定となっている。
ミッション2で使用されるランダーについては、2023年9月からフライトモデルの組み立てを筑波の施設で行っており、2024年の春頃(※)を目途に組み立てを完了、その後打ち上げ前の最終的な環境試験の実施を予定。
現在のところ、ミッション2の打ち上げにはミッション1に続きSpaceXのFalcon 9が使用され、最速で2024年冬(※)の打ち上げを計画している。
※ 2023年11月時期の想定
Top Image : © 株式会社 ispace