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2021.06.30

知財ニュース

病気に立ち向かいネオヒューマンとして生きる決断─人類初「AIと融合」した61歳科学者の著書が日本発売

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イギリスのロボット科学者であるピーター・スコット-モーガン博士は、全身が動かなくなる難病ALSで余命2年を宣告されたことを機に人類で初めて「AIと融合」し、サイボーグとして生きる未来を選んだ。

人間が「AIと融合」するとはどういうことか。それにより「人として生きること」の定義はどう変わるのか。ピーター博士が自らの挑戦の記録として出版し、発売直後から世界で反響を得た『NEO HUMAN ネオ・ヒューマン―究極の自由を得る未来』が6月25日、ついに日本でも刊行された。

ピーター博士

経営戦略コンサルタントとして若くして大きな成功をおさめたピーター博士は、50代を前にアーリーリタイア。同性のパートナーであるフランシスと世界中を旅しながら暮らす悠々自適の生活を手に入れる。

しかし、58歳の時にALSを発症。ALSとは手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が徐々に動かなくなっていき、最終的には自分の体に「閉じ込められた」状態になる病気だ。

ピーター博士はALSと診断された後、研究プロジェクト「ラディカル・ディスアビリティ・プロジェクト」を立ち上げた。そこでは自ら実験台となり、テクノロジーの活用により重度の障害を持つ人々の生活の質を大幅に向上させる試みを行っている。

ピーター博士は胃には栄養チューブ、結腸には人工肛門、膀胱にはカテーテルを装着。さらに、人工呼吸器を使用しているALS患者の多くが「誤嚥性肺炎」で亡くなっている事実に注目し、喉と気管を完全に分離するため自らの「声」を手放すことと引き換えに喉頭を摘出した。

また、顔筋が動かせなくなることと声帯を切除することによって失われるであろう「自分らしさ」を守るため、あらゆる表情と声のサンプルを保存。テクノロジーの進化に合わせて、その時々で最先端のアバターと合成ボイスを構築できるよう準備している。

これらの取り組みを、ピーター博士は笑顔で「アップグレード」と称し、自らを人類の歴史上最も進化した「人間のサイバネティックス生命体」だと位置づけている。

「ALSになっても消化管は問題なく機能しつづける。したがって、胃に直接チューブで栄養を送り込むことで、容易に命をつなぐことができるはずだ。これはきわめて一般的な措置にすぎない。また、肺を膨らませる筋肉が衰えるだけで肺そのものは機能しているのだから、ポンプで空気を送り込んでやれば呼吸の問題も解決される。(中略)私の目には、しかるべきテクノロジーを用いて適切にケアをすれば、ALSは死に至る病には見えなかった。どちらかといえば慢性疾患に近い病気ではないか」(『ネオ・ヒューマン』より)


AIとの融合は、人類に何をもたらすのか。年齢、性別、肉体、時間、病、そして死からの解放を目指す、現在進行形の実話に注目したい。

書籍公式HPはこちら

Top Image : ©東洋経済

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