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大阪・関西万博
2025.10.23
知財ニュース
「こみゃく」生んだ万博デザインシステムの「OPEN DESIGN 2025」がグッドデザイン賞ベスト100に選出

「こみゃく」をはじめとする、万博における参加と共創を促す生成的デザイン・コモンズ「OPEN DESIGN 2025」がグッドデザイン賞のベスト100を受賞した。
「OPEN DESIGN 2025」は“開かれたデザイン”を掲げた大阪・関西万博のデザインシステムの設計を起点に単なるガイドラインではなく参加と共創を促すプロトコルとして展開し、生成的オープンデザインシステムとして社会実装したプロジェクトだ。愛称“こみゃく”を象徴にリアル空間とデジタル空間を横断し文化的共有地を創出した。
現代社会は、気候危機や戦争、AI・バイオテクノロジーの急速な発展など、生命のあり方そのものが揺さぶられる時代に突入している。こうした状況において、人間中心の視点ではもはや立ち行かず、人間以外の生物や自然、非人間的存在との共生を前提としたポストヒューマン的視点や「生命中心」の設計が必要とされている。そのなかで大阪・関西万博が掲げた「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマは、こうした社会課題に呼応し、デザインを「特定の専門性に閉じられたもの」から「社会全体で耕し合う創造性の基盤」へと開いていく試みでもあった。
また東京五輪の経験が残した不信や閉塞感を越えるために、誰もが関われる創造の場を制度の中に実装しようとしたのが、「OPEN DESIGN 2025」における思想と構想だ。その基盤には、オープンソース的なプロトコルとしての「開かれたデザイン」というデザインポリシーが存在している。
「OPEN DESIGN 2025」では、「開かれたデザイン」を実現するために、従来のガイドライン型の設計を超え、参加と共創を誘発する“生成的プロトコル”として万博デザインシステムを構築。特定の制作者によるルールとしてのトップダウン的な統制を超え、誰もが触れ、解釈し、変奏できる構造を設計し、制度と文化のあいだに創造性が自律的に育つ共有地=コモンズを生み出した。
「こみゃく」は、大阪・関西万博のデザインシステムにおいて、“いのち”を象徴する存在として生まれたIDエレメントの愛称だ。最小単位のデザイン仕様(セル)から無数の創作を誘発し、「こみゃく」の二次創作がSNS上で爆発的に広がり多様なクリエーターが参加。SNS上でまるで生命のように自己増殖的にミーム化し拡張し続けた。さらにリアルな会場空間である夢洲会場ではジャンルを超えた多様なアーティストが参加し、デザイン・アート・音が融合する共創体験を構築した。
一般的にデザインシステムの設計思想は制御的な側面を強調することが多いが、万博デザインシステムは制御的な側面は残しつつも、参加と共創を促すプロトコルとして意図的な余白を設計し、実際にリアル空間とデジタル空間を横断する生成的な文化的共有地(コモンズ)を創出することに成功しており、デザインシステムの生成的な側面の可能性を引き出している点が高く評価された。
Top Image : © 公益財団法人日本デザイン振興会