News
2023.01.20
知財ニュース
世界初、冷凍マグロ切らずに鮮度判定可能に─富士通と東海大が超音波AI評価システム確立
東海大学海洋学部水産学科の後藤慶一教授と富士通株式会社の共同研究グループは2022年12月21日、超音波AI技術によりマグロの鮮度を冷凍状態のまま非破壊で評価することに世界で初めて成功したと発表した。
近年の日本食ブームから世界的に漁獲量が上がっているマグロ。しかし、天然マグロの大部分は漁獲時に船上で急速冷凍されるため、品質の判別は「尾切り選別」(尾の断面を熟練者が目視で判断する検査方法)をはじめとする破壊検査が主流で、検査できる場所や検査者が限定されていた。一方、超音波を用いた非破壊検査は、冷凍マグロの肉質により超音波の減衰の影響が大きいことが課題となっていた。
本研究では、正常な検体と鮮度不良の検体から超音波波形を取得し、中骨からの反射波を切り出して機械学習による解析を実施。その結果、鮮度不良の検体の波形では中骨からの反射が大きいことが判明し、これを用いて超音波AI技術により検証した結果、鮮度不良度スコアに有意差が認められ、正しく判定できる性能が得られた。
本技術により、マグロの身を切ることなく冷凍マグロの価値を維持しながら、場所を問わず誰でもマグロの品質評価を行うことが可能になる。研究チームでは、水産商社によるハンディターミナル形式や、漁港でのベルトコンベア形式の自動一括検査へ本技術を導入することで、マグロの流通にトラストをもたらすことが期待できるとしている。
研究チームは今後、マグロの検体数を増やすことで超音波AI技術の精度向上を図るとともに、血栓や腫瘍といった異常の検知にも取り組んでいく。また、水産加工工場などで実証実験を進め、冷凍物を扱う畜産業や医療・バイオ分野などへ幅広く応用していくとのこと。
Top Image : © 東海大学 海洋学部水産学科