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2025.10.23

知財ニュース

2025年度グッドデザイン大賞は能登発「DLT仮設住宅」に決定―解体せず住み続けられる仮設住宅モデルを実現

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公益財団法人日本デザイン振興会は、「2025年度グッドデザイン賞」の受賞結果を発表した。5,225件の審査対象の中から、1,619件の受賞を決定し、最高賞である「グッドデザイン大賞」は、能登半島地震における仮設住宅の建設で、解体せずに恒久的に使い続けられる新たな仮設住宅のモデルを実現した「DLT木造仮設住宅」に決定した。

「DLT木造仮設住宅」は、2024年の能登半島地震により建設された応急仮設住宅だ。木材に穴をあけて並べたものに木ダボを挿し込んで接着剤を使わずにパネル化したDLT(Dowel Laminated Timber)を、箱型のユニットにして積み上げることで工期を短縮。珠洲市と輪島市において計12棟・166世帯分の二階建て仮設住宅を建設した。

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プレハブや移動式コンテナなど従来型の仮設住宅は、学校のグラウンドや公園に建設され、入居期間終了後に撤去される。近年では、仮設住宅を木造にして住み心地を良くし、場合によっては恒久的に利用できるようにする動きが広がっている。ただ、木造仮設住宅の多くは「在来構法」で建てられており、大工など専門職の人手不足や工期を短縮しにくいという課題がある。そこで、災害時に職人に頼ることなく一般作業員でも施工でき、かつ工期の短縮が可能な木質パネルであるDLT(Dowel Laminated Timber)を使った仮設住宅を開発した。

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DLTは、穴をあけた木材を並べて木ダボを挿すだけで接着剤を使わずにパネル化できるため大型設備を必要とせず、地場の中小製材工場でも製造に参加することができる。これら地域における製材工場が連携することで大量のDLTの供給を可能にし、短期間での仮設住宅の建設を実現した。

DLTの基本部材には、30mm×105mmという一般規格の木材を使用している。この木材を105mmずつ交互にずらして木ダボを挿し込み、端部をフィンガー状に加工したパネルを製作し、その端部を直角に接合する工程を繰り返すことで、箱型のユニット(幅3m×高さ2.7m×奥行き5.2m)を構成した。1階には、この箱型ユニットを間隔を空けて配置し、2階には2つのユニットをまたぐように別のユニットを載せており、正面からだと千鳥状に見える。

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作業は工程を最小限に抑え、単純で繰り返すプロセスを基本としており、被災地で深刻化する職人不足の中、専門技能のない一般作業員が中心となって建設することができた。 室内にはDLTで使用した木材がそのまま現しとなっており、天然の木の香りが漂う。入居者からは「気分が落ち着く」などの声が寄せられた。このDLT仮設住宅は、解体せずに恒久的に住み続けられる仕様となっている。

審査委員からは、「災害支援の経験からの物理的ノウハウに加え、被災者を中心に据えて思考するヒューマニズムはまさに建築家ならではの社会貢献である。「能登を忘れるな」のメッセージと共に、この高い評価を社会に発信したい。」と評価されている。

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Top Image : © 公益財団法人日本デザイン振興会

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