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2023.06.30

知財ニュース

文科省、デジタル上に脳の仕組み再現「脳神経科学統合プログラム」公開―脳神経疾患の治療・創薬、シーズ開発へ

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文部科学省は6月29日、認知症などの脳神経疾患の画期的な診断・治療・創薬など、シーズ開発に向けた新たな脳科学研究の方向性を明らかにした。同日開催された、先端医療などの審議を担うライフサイエンス委員会の「脳科学作業部会」で概要説明を行った。

その中で、来年度から研究期間6年をかけて取り組む「脳神経科学統合プログラム(仮称)」を提示。病態の予測を行える、デジタル空間上の脳モデルの開発や、研究基盤としての「デジタル脳」の整備などが盛り込まれた。

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新たな取り組みは、文科省が2021年から実施している「脳とこころの研究推進プログラム」の1つとなる。同プログラムは、霊長類の脳機能を担う神経回路の全容をニューロンレベルで明らかにし、神経疾患・精神疾患の克服につながる脳機能を解明するための研究開発・基盤整備を目指している。

その中の「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト(革新脳)」、「戦略的国際脳科学研究推進プログラム(国際脳)」が2023年度で終了となることから、これまでの成果を活かした方向性として、今回の新たなプログラムが示された。

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革新脳では、世界唯一のマーモセット(サル)の脳画像統合データベースを構築。また細胞レベルから全脳まで対応可能な、世界的優位性のある神経活動計測技術や生体内高解像度イメージング技術などを開発している。国際脳では、神経・精神疾患の発症前後を含む、世界標準のヒトのMRIデータベースを整備。また新しい脳型アルゴリズムの開発などを行ってきた。

新たなプログラムでは、そうしたデータベースや開発技術、20年から開始した「精神・神経疾患メカニズム解明プロジェクト(疾患メカニズム)」で整備を行っている、死後の脳を活用する「ブレインバンクネットワーク」などを有機的につなげる。

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文科省は、これまで研究成果が実際の治療や新薬開発へ十分につながっていないという課題認識を持つ。既存成果を統合し、脳神経疾患の画期的な治療・創薬などのシーズ開発につなげていくという。

連携強化もキーワードにあげている。基礎と臨床研究、情報科学や遺伝子操作などの実験間、大学など研究機関や医療機関、産業界との連携など。またシード開発をサポートする「支援班」を設け、知財戦略などの実用化支援を受けることも想定している。

文科省担当者は部会で、文科省単独ではなく、厚生労働省などの関連する事業とも連携しながら進めていきたいと語った。

新たなプログラム案は、大きな変更要請なく概ね承認された。今後は、寄せられた意見などを踏まえて調整しながら設計を進めていくという。日本の総力が集まる新たなプログラムの展開が期待される。

「脳とこころの研究推進プログラム」(AMED)
文部科学省 科学技術・学術審議会ライフサイエンス委員会 脳科学作業部会(第7回)議事次第
概要資料・脳神経科学統合プログラム(仮称)

Top Image : Pixabay

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