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2022.09.05
知財ニュース
デンマークのアーティスト集団が「人工党」を結成─AIが政策をすべて立案
デンマークでは2022年5月、政策立案を人工知能AIが全面的に行う新政党「人工党(DET SYNTETISKE PARTI)」が結成された。2023年6月に開催される総選挙での候補者の擁立を目指して活動を行っている。
設立したのは、アーティスト集団「コンピューター・ラース(Computer Lars)」。同党は、デンマークの選挙制度の最適化を目的とした分析から出発しているというが、デンマークでは現在約230の小政党が濫立し、社会への嘲笑や批判を行う政党も多い現在の政界への皮肉が込められているという。
同人工党のAIは、1970年以降のデンマークの小政党のあらゆる刊行物をAIで分析し、"庶民の政治理念"を代表しうる政策を立案するとのこと。人工党が掲げる政策には、デンマークの平均給与の2倍以上である月額10万デンマーク・クローネ(約183万円)を支給する最低所得保障制度ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)の導入や、国連が定める「持続可能な開発目標(SDGs)」に新たに「人間とアルゴリズムの直接的な共存」の追加を目標とすることなどがある。
デンマークでは、2019年に開催された前回の総選挙で有権者の約15%が棄権した。同党では、この理由を既存の政党の魅力の無さと主張し、棄権した有権者に働きかけたいとしているが、総選挙に向けた署名では、2022年8月現在、4筆しか集められていない(候補者の擁立には2万182筆が必要)。そのため、同党が来年の総選挙で候補者を擁立できるかは不透明だが、議席を獲得できた場合、同党は国会議員の仕事とAIを結び付けていくという。
なお、同党のAIとは、コミュニケーションアプリ「Discord(ディスコード)」のチャットボットで対話が可能。2022年9月には、初の“人間の聴衆に向けた”選挙集会の開催も予定している。
Top Image : ©︎ DET SYNTETISKE PARTI