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2024.04.09
知財ニュース
光を99.3%吸収、超漆黒コーティングを開発─宇宙の極限環境で使われる光学機器の強化へ
中国の上海理工大学研究チームが、光の吸収率99.3%を誇る、宇宙でも使える漆黒コーティングを開発した。3月12日に発表されたニュースリリースによると、航空宇宙グレードのマグネシウム合金用の超黒色薄膜コーティングを開発したとしており、この超黒色薄膜コーティングは光の99.3%を吸収し、過酷な条件下でも耐えられる耐久性を備えているとのこと。
CREDIT: JIN ET AL.
天文学や精密工学において、宇宙望遠鏡や極限環境での光学機器の場合、機材を黒色塗料でコーティングすると迷光が減少し、画像が向上、性能も向上するとされている。
しかし、既存の黒色コーティングは、脆弱性によって限界がある。また、他の多くのコーティング方法では、チューブの内側やその他の複雑な構造にコーティングを施すことが困難なだとされている。
これらの問題を解決するために、研究チームは原子層堆積(ALD)という製造技術に注目した。この方法では、ターゲットを真空チャンバーに入れ、特定の種類のガスに順次曝露する。この原子層堆積法の大きな利点の1つは、円柱、柱、溝などの非常に複雑な表面でも均一な膜コーティングを得られることだ。
チームは超黒色コーティングを作成するために、炭化チタンアルミニウムと二酸化ケイ素の交互層を使用した。炭化チタンアルミニウムは吸収層として機能し、二酸化ケイ素は反射防止構造を作成するために使用されたとのこと。この2つの材料が連携し、コーティングされた表面からほぼすべての光が反射するのを防ぐことが可能になる。
研究チームはテストで、400ナノメートルの紫光から1,000ナノメートルの近赤外線まで、広範囲の光の波長にわたって平均99.3%の吸収率を発見した。さらに、このフィルムは悪環境下でも優れた安定性を示し、摩擦、熱、湿気の多い条件、極端な温度変化に耐えるのに十分な強さを持っているとのことだ。
研究チームは、最も過酷な条件下で動作する宇宙望遠鏡や光学ハードウェアの強化に使用されることを期待しており、その性能をさらに向上させるために取り組むとしている。
Top Image : © アメリカ 物理学研究所