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2023.07.07

知財ニュース

京大と住友林業、世界初「木造人工衛星」の打ち上げへ─10か月間の木材宇宙曝露実験を完了

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京都大学と住友林業は2023年5月12日、「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」の一環である国際宇宙ステーション(ISS)での木材の宇宙曝露実験が完了し、試験体が地球に帰還したことを発表した。

「宇宙木材プロジェクト」は、木造人工衛星「LignoSat(リグノサット)」の打ち上げを目指すプロジェクト。木材は電磁波・磁気波を透過するため、アンテナや姿勢制御装置を衛星内部に設置できるほか、構造を簡素化でき、また運用終了後は大気圏突入時に完全に燃え尽きるので微小物質(アルミナ粒子)が発生せず、クリーンで環境に優しい人工衛星を開発できる。

今回の実験では、物性実験で最終候補に選出されたヤマザクラ、ホオノキ、ダケカンバの3樹種を過酷な宇宙空間に約10か月曝露。木材試験体は、2023年1月に地球に帰還し、米国航空宇宙局(NASA)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)の検査を経て、3月に京都大学、住友林業の研究チームの手元に到着。その後、外観や質量などが測定された。その結果、どの樹種も木材の割れ、反り、剥がれなどがなく、材質が安定して保たれていたことが確認された。

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研究チームでは、極端な温度変化や原子状酸素の衝突、銀河宇宙線や太陽エネルギー粒子の影響など、地球上とは桁違いに過酷な宇宙空間に晒した場合、何らかの浸食が生じることを想定していた。しかし、実際には、外観上に極端な劣化は認められず、木材の利用拡大への可能性が示された。

なお、同チームでは、2024年2月以降に打上げを計画している木造人工衛星「LignoSat」の材質として、ホオノキの使用を決定したとのこと。

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なお、京都大学では、今回の曝露試験のデータと1号機の運用データを木造人工衛星「LignoSat」2号機の設計や計測データの基礎資料として役立てる予定。今後は、試験体の詳細分析を通じて、ナノレベルの物質の劣化のメカニズムを解明し、高耐久木質外装材などの高機能木質建材や木材の新用途開発に役立てていきたいとしている。

プレスリリース(住友林業株式会社)(1)(2)

プレスリリース(京都大学)

京大宇宙木材プロジェクト 公式Twitter

「LignoSat」詳細サイト

Top Image : © 住友林業 株式会社

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