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2023.01.05

知財ニュース

世界で残り2頭のキタシロサイ、iPS細胞から精子・卵子のもと作製、阪大ら世界初の成功─絶滅危惧種保全へ

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大阪大学大学院医学系研究科の林将文特任研究員、林克彦教授らの研究グループは、ミナミシロサイのES細胞とキタシロサイのiPS細胞から、精子・卵子のもとになるPGC様細胞(始原生殖細胞様細胞)を試験管内で誘導することに世界で初めて成功した。この成果により、絶滅危惧種のキタシロサイの多能性幹細胞から卵子や精子を作製する第一歩が達成された。

従来、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞からPGC様細胞への誘導はマウスやヒトなどで行われてきたが、絶滅危惧種への応用は行われていなかった。理由としては、iPS細胞に比べて品質が高いES細胞は初期胚が必要なこと、野生において高品質な多能性幹細胞の取得が困難であることや、種間の違いにより誘導に必要な培養条件(培養液や培養時間)が異なることなどがある。

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これらの課題を解決するため、本研究グループでは2018年に培養条件が異なるミナミシロサイの初期胚の取得とES細胞の樹立に成功。2022年には、ミナミシロサイのES細胞に似たキタシロサイのiPS細胞の樹立にも成功した。さらに本研究では、ゲノム編集技術を必要としない手法の確立により、野生のキタシロサイと同じゲノム情報をもつPGC様細胞の誘導にも成功している。

なお、多能性幹細胞は体外培養で無限に増殖することから、ほぼ制限なく多数のPGC様細胞を作製可能という。また、キタシロサイの生体から取得した卵子や生死を用いた体外受精技術はすでに開発されており、これに多能性幹細胞から作製した卵子や精子を適用することでキタシロサイの保全に貢献ができるとのこと。

キタシロサイは密猟や環境破壊により、現在メス二頭のみの現存となり、自然繁殖が不可能になっている。同大学院では、本技術によりキタシロサイの繁殖・保全に貢献できるほか、キタシロサイ以外の哺乳類への応用も期待できるとしている。

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Top Image : © Nature Asia

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