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2022.12.15
知財ニュース
海底のカプセルドームで野菜を栽培する菜園プロジェクト「Nemo’s Garden」─海水から自給自足で生育
地球温暖化による異常気象や自然災害の深刻化、人工増加による食糧不足などの課題に対する解決のひとつとして、海底にカプセルを設置して水中で農作物を育てるプロジェクト「Nemo’s Garden(ニモのガーデン)」がイタリアで行われている。
「Nemo’s Garden」は、イタリア北部のノーリ海沖合の海底に固定したプラスチックドームでオクラやアロエなどの陸生植物を水中栽培する実験的なプロジェクト。気候変動や自然災害の深刻化、洪水や干ばつ、水不足、世界的な人口増加に伴う食糧不足などに対する解決策として期待されている。
ドーム内は、水に沈めた逆さまのコップのように海水と空気に分かれ、暖まった空気を内部にとどめる温室構造になっている。一定の温度環境と、蒸発した海水からの水分補給、充満させた二酸化炭素によるステロイド的効果でスピーディーな生育ができ、肥沃な土壌なしで作物が育てられる。従来の温室とは異なり、追加のエネルギー源を必要とせず、また本ドームの温室は24時間365日モニタリングされ、細かいデータ計測が行われている。
■ Nemo’s Gardenのポイント
1. Self-sustainable
太陽から得られる再生可能エネルギーと、海水の淡水化で得られる水を使用する自給自足の仕組み。ドーム内の空気と周囲の海水との温度差による蒸発で球体内部の湿度が80-90%に保たれ、必要な水分は結露で供給される。また、植物自身が光合成で酸素供給を再生するため、追加のエネルギーが不要。
2. Eco-friendly
海洋環境や生態系にはほとんど影響がないシステムで、海底温室を通して資源をどう保護するかの調査も行なっている。また、閉鎖された環境なため病気対策の薬剤も不要なことから、海の生態系への悪影響を防ぐことにも繋がっている。
現在、農業の淡水使用は世界中の淡水使用率の約70%を占めるとされる。産業や都市部による水資源への供給の高まりや温暖化による自然災害から、世界的に水不足が深刻化している地球規模の問題において、また、世界の人口増加に伴う食料確保の観点からも、同プロジェクトは代替農業システムとなることが期待されており、今後の動向に注目したい。
Top Image : © OCEAN REEF Inc.