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2024.07.31
知財ニュース
宇宙飛行士の作業効率向上へ、尿を飲料水に変えるシステム開発
MAG(Maximum Absorbency Garment)は宇宙飛行士が使用する吸収性の高いオムツ。船外活動中に排泄物を吸収するためのもので、MAGはNASAによって開発されたものだが、このたび、尿の収集と濾過システムがコーネル大学とウェイルコーネル医科大学のMason Labで開発された。
現状、宇宙飛行士は、船外活動中は使い捨てオムツを使用している。このオムツは水分を破棄する機能のみだ。飲料水では、現在の宇宙服内ドリンクバッグでは、より頻繁で長距離の船外活動に十分な水を提供できず、宇宙船から長時間離れる必要がある不測の事態が発生する可能性が高くなる。
宇宙飛行士の平均WEI(作業効率指数)はおよそ0.39~0.5。NASAは2025年後半に打ち上げ予定の次の月探査アルテミス計画までにこれをおよそ3.0にまで引き上げたいと考えている。この目標は、宇宙飛行士の水分補給と衛生状態を改善して効率を高めることで、大幅に達成できる可能性があるのだという。
今回、コーネル大学、ウェイルコーネル医科大学が開発した濾過システムは、これらの衛生と水分補給の懸念に対処できるとしている。
この濾過システムでは、尿の存在を検知する湿度センサーで真空ポンプによって尿を収集し、男性と女性それぞれに適したシリコン製の尿収集カップを使用する。収集された尿はバックパックの尿濾過システムに移され、2段階濾過装置で純水と塩に分離される。この水に電解質を供給し、飲料水として利用できるようにするのだという。
尿収集カップモデル(左が男性用、右が女性用)
この技術により、尿の87%を再生利用できる可能性が高いとのこと。装置のサイズは、38cmx23cm、深さ23cmで、全体の重量が約8kgになると予想されている。
将来の宇宙ミッションに向けて、さらなる研究とテストが必要だとしている。
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