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2021.12.17

知財ニュース

人間と同じレベルで臭気を分析する「電子鼻(e-nose)」をスペインの研究チームが開発―ドローン搭載で廃水プラントの臭気を特定

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スペインのカタルーニャ生物工学研究所の研究チームは、人間の鼻とほぼ同じくらい鋭い「携帯型電子鼻(e-nose)」を設計したと発表した。e-noseをドローンに搭載することで、さまざまな臭いの濃度を測定し、臭気マップをリアルタイムで作成できるという。2021年11月16日、出版社Cell Press(マサチューセッツ州)の発行するオープンアクセスな学術誌『iScience』で公開された。これにより廃水処理施設の悪臭の原因特定のコスト、時間を削減できるとのこと。

従来、廃水処理施設の臭気は、施設から採取した空気の袋を嗅いで分析する「動的嗅覚測定法」で測定されている。しかしこの方法はコストや時間がかかり、人間の知覚に頼り、測定頻度も低いため、オペレーターが問題に迅速に対応できず、悪臭の原因を突き止められない問題があった。

廃水プラントの臭気放出をより適切に監視するため、サンティアゴ・マルコ上級研究員と研究チームは、人工知能(AI)を用いて、リアルタイムの監視とデータ可視化のための携帯型電子鼻e-noseを設計した。始めに研究チームは空気を集め、硫化水素、アンモニア、二酸化硫黄など刺激性のある化学物質を嗅ぎ分けるようにe-noseのAIの訓練を実施。またe-noseには、バクテリア活動の指標となる二酸化炭素センサーも搭載されており、実験では、e-noseは人間の鼻とほぼ同じように臭気を嗅ぎ分けたとのこと。

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その後、研究者たちは1.3kgのe-noseをドローンに取り付け、2021年1月から6月にかけてスペイン南部の中型廃水処理施設の上空の空気を測定した。ドローンは約10メートルのチューブで空気を吸い込み、センサー室で空気を分析した。実験の結果、e-noseは廃水の臭気モニタリングが可能と実証され、13回の測定のうち10回が人間の担当者による評価と一致したという。ドローンの機動性とAIアルゴリズムによって、研究チームは臭気濃度をマッピングし、初めてドローンの測定値から臭いの強さを予測することができた。

今後、研究チームはe-noseの軽量化を進め、この臭気分析方法の標準化プロセスを開発するとのこと。また、精度に影響を与える温度や湿度などの環境条件に対して、さらに装置の最適化を進めるとしている。

上級研究員マルコ氏は「この研究は、埋立地や堆肥化プラント、牛や豚を飼育する大規模農場など他の施設にも応用できるかもしれません」と述べ、「この研究が業界にどのような影響を与えるか見てみたい」と語っている。

研究文献はこちら 『RHINOS: A lightweight portable electronic nose for real-time odor quantification in wastewater treatment plants』- iScience 103371 DOI: 10.1016/j.isci.2021.103371

Top Image : © iScience

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