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2025.09.26

知財ニュース

AI時代の知財を問う、稲穂健市氏の新書『世界は知財でできている』発売―AI・模倣の境界線とは

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弁理士、米国公認会計士、科学技術ジャーナリスト、東北大学特任教授の稲穂健市氏による新書『世界は知財でできている』が、講談社現代新書より刊行された。本書は、生成AI(人工知能)が社会に浸透し、著作権や知財(知的財産)をめぐる環境が激変する中で、すべての現代人が必須とする知財リテラシーが網羅的かつ俯瞰的にまとめられた一冊だ。

我々は現在、簡単な指示だけでAIが文章、画像、動画、音楽など、これまで人間しか作れないと考えられていたものを易々と作り出す、まったく新しい世界に生きている。インターネットはAI生成物であふれているが、AIが何かを作り出す際に人間が生み出した「元ネタ」を利用していることから、「そのまま使っても大丈夫なのか」「他人の権利を侵害しないか」と不安を持つ人は少なくない。

本書は、生成AIによって複雑化する知財をめぐるトラブルを、豊富なケーススタディを通じて実践的に解説している。具体的な論点には、AI生成物に著作権はあるのか、無制限にAIに学習をさせてもよいのか、「○○風画像」はクリエイターの権利を侵害するのか、「声」に権利はあるのか、流行語は商標登録できるのか、Vチューバーにはどんな権利があるのか、といったタイムリーな疑問が含まれている。

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世界は知財でできている (講談社現代新書)

目次にある通り、本書は「生成AIが揺さぶる『知財』のあり方」のほか、「終わらない商標トラブルと炎上」(SNS炎上事案、『鬼滅の刃』の着物の柄の模倣は許されるのか?など)、「個人の人格的利益と『知財』」(『セクシー田中さん』問題など)、「重なり合う『知財』の行方」(知財ミックス戦略、新型コロナワクチンも特許だらけ?特許の薮など)、「研究者やスタートアップが『知財』で戦う方法」、「ところ変われば……『知財』の国際問題」、「変わりゆく『知財』の世界」(ダイバーシティと「知財」、AI関連発明の行方、仮想空間に広がる「知財」)といった、最新かつ複雑なテーマを網羅的・俯瞰的にまとめている。

「知財」の保護制度は、創作意欲の維持と世の中の混乱を防ぐために形作られ、産業や文化の発展につながってきた。

高度情報化社会において、Google、OpenAIなど世界の最先端を走る企業は知財においても最先端を走っており、「知財を制するものは、世界を制する」と言われる。しかし、生成AIの登場は伝統的な知財の概念を大きく揺さぶり、新たな秩序が形成されつつある。AIが疲れることなく過去の成果を出力し続けることや、シンギュラリティー(技術的特異点)の到達予測もあり、これまでの知財の保護の枠組み自体が大きな転換を迫られている。

著者の稲穂健市氏は、東北大学研究推進・支援機構リサーチ・マネジメントセンター特任教授、弁理士、米国公認会計士などを務め、「知財啓発の第一人者」として知られており、本書は、最新知識を楽しく学ぶことで、読者が「知財」を攻撃と防御の双方の武器として使いこなせるようになることに貢献することを目指している。

専門家ではない方には知財の入門書として、特許や著作権の実務家にとっては隣接法域の知識をアップグレードする参考書として、読み終わった後も手元に置いて世の中の動きを振り返ることができる、様々な立場の読者におすすめできる一冊だ。


詳細はこちら

『世界は知財でできている』 /著:稲穂 健市(講談社 現代新書)

書籍ページ(Amazon)

『世界は知財でできている』(講談社現代新書)の書影が公開されました!(稲穂健市氏 note)

世界は知財でできている (講談社現代新書)


▼書籍解説より

我々はこれまでとはまったく別の世界に生きている。

文章、画像、動画、音楽など、これまで人間しか作ることができないと考えられていたものを、簡単な指示を出すだけでAI(人工知能)が易々と作り出すようになった。実際に、インターネットはいつの間にかたくさんのAI生成物であふれている。

AI生成物について「そのまま使っても大丈夫なのか?」「他人の権利を侵害しないだろうか?」と不安になっている方も少なくないだろう。そう考えてしまうのは、AIが何かを作り出す際、人間が生み出したものをいわゆる「元ネタ」として利用していることを理解しているからに他ならない。本書のテーマである「知財」とは、ひっきりなしに目に飛び込んでくる文字、映像、なにげなく耳に入ってくる音楽など、AIの学習対象となり得る「元ネタ」の情報を含むものである。

そのほか、ふだん使用している服や靴、机やいす、テレビやスマホはもちろん、街中にあるビルやモニュメントなども「知財」に関係している。このように日常には「知財」があふれているが、そもそも「知財」とは何であろうか?

本書は「知財」を巡る現状と今後の方向性に関する最新知識を楽しく学んでいただくことで、一般の読者の皆さんの「知財」のリテラシーをアップグレードしてもらうことを目指したものである。様々な「知財」について網羅的に取り上げながら、我々が新しい時代にどう備えていくべきかについても解き明かしていきたい。

「 知財トラブル 」の地雷を 踏まないための基礎知識
あなたはわかりますか?

●AI 生成物に著作権はあるのか
●無制限にAI に学習をさせてもよいのか
●「○○風画像」はクリエイターの権利を侵害するのか
●『鬼滅の刃』の着物の柄の模倣は許されるのか
●流行語は商標登録できるのか
●「声」に権利はあるのか
●Vチューバーにはどんな権利があるのか

『世界は知財でできている』 /著:稲穂 健市(講談社 現代新書)

書籍ページ(Amazon)

Top Image : © 講談社

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