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2024.07.29
知財ニュース
マサチューセッツ工科大、脳の信号で自然な歩行を実現できる義肢を開発
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、新しいタイプの外科的介入と神経補綴インターフェースを使用して、自然な歩行を実現できる義足を開発したと発表した。
最先端の義肢は、自然な歩行を実現することを助けることはできるが、義肢に対する完全な神経制御をユーザーに提供するわけではない。
手足の動きのほとんどは、交互に伸びたり縮んだりするペアの筋肉によって制御されている。従来の膝下切断では、これらの筋肉の相互作用が妨げられ、神経系が筋肉の位置と収縮速度を感知することが非常に困難になる。それにより、膝下切断を受けた人は義肢が空間内のどこにあるかを正確に感知できないため、義肢の制御に問題が生じる場合があるのだという。
研究の主任著者であるヒュー・ハー氏の研究チームは、神経系を完全に制御して自然な歩行ができるよう、数年前からAMI手術の開発に着手した。これは自然な主動筋と拮抗筋の相互作用を切断するのではなく、筋肉の両端をつなぎ、残存肢内で筋肉が動的に相互に伝達されるようにするのだという。この方法は一次切断時に行うこともでき、最初の切断後に修正手術の一環として筋肉を再接続することも可能とのこと。
この手術は、主動筋拮抗筋神経インターフェース(AMI)として知られており、患者は手術後に痛みや筋萎縮も軽減した。腕を切断した人にもこの手術が行えるのだという。
研究チームは、この手術を受けた患者は切断された手足の筋肉をより正確に制御することができ、それらの筋肉は手足と同様の電気信号を生成していることを発見した。
研究チームはAMI手術を受けた7人と従来の膝下切断を受けた7人にバイオニック義肢を使用してテストを行った。バイオニック義肢は、足首に電力を供給し、前脛骨筋と腓腹筋からの筋電図(EMG)信号を感知できる電極を備えた義肢だ。テストの結果、AMI手術を受けた7人の患者は、従来の切断手術を受けた人々よりも、より速く歩き、障害物を回避し、より自然に階段を上れるようになったのだという。
また、従来の手術を受けたグループは歩くことはできたが、義足の動きが自然ではなく、動きが全体的に遅かったとのこと。
クレジット: ジミー・デイ、MIT メディアラボ
研究チームは、ますます高度化するロボットコントローラーやセンサーに人々が頼るのではなく、「人体の再構築」が目標の一歩だとしている。
Top Image : © マサチューセッツ 工科大学