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2025.01.31
知財ニュース
花王、油で汚染された土壌をその場で洗浄できる新技術を開発―再利用困難なブラックフィールド問題の解決策
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花王のテクノケミカル研究所は、油で汚染された土壌をその場で洗浄できる新しい洗浄剤と工法を開発したことを発表した。従来よりも簡単かつ低コストで油汚染を取り除くことができ汚染が理由で土地が放置されるブラウンフィールド問題に向けて有用とされている。
土壌中の小さな土粒子の間に油が集まることに着目し、土粒子を分散させて油と反発する性質に変える洗浄剤を開発。水を加えて撹拌するだけで、土に付着した油を引き剥がして水中に浮き上がらせることが可能になったという。この洗浄剤を使用することで、プラントに運搬して機械による洗浄をせずとも、その場で土壌を洗浄できると考えられ、今までよりも格段に簡単に土壌の浄化が行えるようになることが期待できる。
同社が共同開発に取り組む株式会社タツノとの実験では、模擬的に作成した油汚染土を用いて洗浄効果を検証した。
結果、油臭や油膜が消失し、TPH(石油系炭化水素の総量)も大幅に低下。さらに、洗浄後の排水処理により水質汚濁防止法の基準値を満たし、CO2排出量も従来の工法に比べて約30%削減できることが分かったという。
同技術は、世界中で問題となっている、汚染によって土地が放置されることを懸念する「ブラウンフィールド問題」への対策として期待が集まる。日本でも広大な土地がブラウンフィールド化すると試算されており、従来の「掘削除去法」では費用がかさむという課題があった。開発された洗浄剤を使えば、汚染土壌をプラントに運搬して機械で洗浄する必要がなくなり、その場で簡単に浄化できるようになるだろう。
今回開発された新しい洗浄剤と工法は、コスト、時間、環境負荷を抑えて土壌浄化を実現できる可能性が高い。同社は、ガソリンスタンドや工場跡地などでの使用を想定し、ブラウンフィールド問題の解決に向けて実用化を目指して研究を進めていく予定だ。
Top Image : © 花王 株式会社