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2021.10.19
知財ニュース
大気中から二酸化炭素を回収する世界最大のプラント「Orca(オルカ)」、アイスランドで始動
近年、異常気象による災害が世界中で頻繁に発生するようになり、気候変動の主要原因の一つとして問題視されている二酸化炭素(CO2)排出を抑制する対策が急務となっている。
このような実情を踏まえ、スウェーデンのベンチャー企業Climeworksが取り組んでいるのが、すでに大気に放出されたCO2を回収する「DAC(Direct Air Capture)」という技術。このほど、世界最大のDACプラント「Orca(オルカ)」をアイスランドで稼働した。
Orcaはコンテナ型の換気装置が重ねられるモジュラー式となっており、ファンが回って周辺の大気を取り込み、その大気からCO2だけを抽出する設計だ。取り込まれたCO2は地中深くに送り込まれ、そこで自然の岩石化プロセスにより約2年ほどかけてCO2を岩石に変えられるとのこと。
Orcaは最大で年間4000トンのCO2を大気から除去できるといい、今後、予定通り稼働すれば、世界の二酸化炭素回収量は40%以上増加し、毎年1万3000トンに達する見込みという。また、稼働させるのに必要な電力は、近接する地熱発電所からの再生可能エネルギーを活用しているとのことだ。
OrcaのDAC技術も含めたCO2回収技術には非常にコストがかかるため、すでにいくつかの著名企業がOrcaに出資している。Microsoftや保険大手のSwiss ReもClimeworksと契約することで、二酸化炭素排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにしようとしているとのことだ。また、大手企業に限らず中小企業や個人でもサブスク方式で二酸化炭素を回収してもらえるという。
まだまだCO2の回収コストが高く、地中貯蔵による岩石化も実際に機能するかどうか長期的な検証が必要なOrcaだが、ClimeworksはCO2回収のDACユニットを今後、低コストで作ることに重点を置いているという。気候変動対策の一助になるとして、今後の普及や低コスト化、スケールアップの動きに期待していきたい。
Top Image : © Climeworks