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2021.04.09
知財ニュース
釈迦ならどう答える? 京大チームが仏教対話AI「ブッダボット」を開発 ——伝統知と人工知能を融合
現代人の悩みや社会課題に対して仏教的観点から回答する仏教対話AI「ブッダボット」を、熊谷誠慈(京都大学 こころの未来研究センター准教授)と古屋俊和(Quantum Analytics Inc.CEO)らの研究グループが開発した。
Googleの提供する「BERT」というアルゴリズムを応用し、最古の仏教経典『スッタニパータ』から抽出したQ&Aリストを機械学習させた結果、精度には課題があるものの、ユーザーからの質問に対して文章の形で回答できる状態となった。
スッタニパータは、約2500年前の釈迦入滅から約200年がたつまでに成立したとされ、釈迦と弟子の対話がメインとなっている。研究チームは、スッタニパータの日本語訳から約100のパターンの質問と答えを抽出。AIに機械学習をさせることで、さまざまな質問を入力すると内容に応じて回答例が示されるブッダボットを開発した。
近年、わが国では仏教離れが進み、2040年には4割の仏教寺院が消滅するとも言われています。日本における仏教離れの原因は、仏教が形骸化し、人々の悩みや社会課題に回答できなくなったためだと考えられます。仏教復興のためには、「幸せになるための教え」「苦悩の除去」という仏教本来の役割を取り戻す必要があるでしょう。—— 複数の人間が異なる場所で同時に伝統知を享受できる方法がないかと模索した結果、仏教開祖ゴータマシッダールタのような存在を人工知能で創造できないかという着想に至りました。(京都大学HPより)
本技術は、学術研究や仏教界のみならず、メンタルヘルスやコンサルティング、教育産業などの分野への応用も期待されている。また、JST(科学技術振興機構)のムーンショット型研究開発事業、新たな目標検討のためのビジョン策定(ミレニア・プログラム)で熊谷准教授の研究グループが開発提唱した新テクノロジー「Psyche Navigation System」にも応用する予定だ。
ただし、誤用や悪用等により、ユーザーを誤った道に導く危険もあり、一般公開には注意が必要だという。AIが人の精神や在り方を導く、そんな未来がいつかやってくるのかもしれない。