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2025.12.16

知財ニュース

亡き夫をAIで「復活」させる、生前の声と記憶をAIに託すドキュメンタリー制作

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あるデンマークの女性が、末期癌と診断され2024年1月に世を去った夫の「AIクローン」を作成した。この取り組みを追ったドキュメンタリーが話題を呼んでいる。

夫婦は、妻のカトリーン・マルティヌセンさんと、夫のステファンさん。40代の2人には、ステファンさんの連れ子である10代の息子がいる。 ステファンさんが末期癌の診断を受けた際、カトリーンさんは「彼がいなくなった後も、何らかの形でそばにいてほしい」と切望し、これが夫婦でステファンさんのAIクローン制作を始めるきっかけとなった。

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制作にあたり、ステファンさんは自身の声を録音し、考え方や感情、記憶などをAIに学習させてアバターの作成を進めた。しかし当初、完成したAIはカトリーンさんにとって「彼とは違う」と感じられるものであり、開発は難航した。

そこで夫婦は、AI企業FraiaのCEO兼共同創業者であるアンデルス・ハスレ・ニールセン氏(Anders Hasle Nielsen)に協力を仰いだ。夫婦間で交わされた6万6000件にも及ぶメッセージ履歴などを読み込ませたが、それでも納得のいく精度には達しなかった。 転機が訪れたのは、2024年1月にステファンさんが亡くなった後のことだった。開発チームは「単に情報を増やすだけでは、人格が平均化されてしまう」と気づき、あえて情報を制限するアプローチを採用。「過去30回分の会話」のみを保持する短期記憶モデルに切り替えたことで、まるで生きている彼と話しているようなリアルな反応が返ってくるようになり、カトリーンさんもその効果を実感したという。

この一連の物語は、2025年8月にデンマークでドキュメンタリー番組『Du Forsvinder Aldrig(あなたは決して消えない)』として放映された。制作はノルディスク・フィルムTV、監督はマグナス・バーデレーベン氏が務めている。

ディレクター(マグナス・バーデレーベン)のインスタグラムはこちら

The woman who made a digital clone of her dying husband

Top Image : © Magnus Bardeleben

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