News
2024.05.15
知財ニュース
すべての血液型で輸血可能となるか―赤血球抗原を除去する新酵素、障害を取り除き普遍的なドナー血液実現へ
デンマーク工科大学(DTU)とルンド大学の研究者らは、赤血球から、普遍的なドナー血液の開発の妨げとなる障害を取り除く、新しい酵素を発見したと発表した。この酵素は、赤血球と混合すると、ヒトAB0血液型の「A抗原」と「B抗原」を構成する特定の糖を除去できる酵素なのだという。この結果は科学雑誌「Nature Microbiology 」に掲載されている。
ヒトの赤血球は、AB0の4つの血液型(A型、B型、AB型、0型)を定義する特定の抗原と抗体を持っている。「A抗原」と「抗B」を持つA型の人に、「B抗原」と「抗A」を持つB型の血液を輸血すると、A型の「抗B」が輸血したB型の「B抗原」を攻撃してしまう。このため、ドナー血液の作成には「A抗原」と「B抗原」を除去する必要がある。
A型またはB型の血液型をAB0型の汎用ドナー血液に変換することに成功すると、現在4つの異なる血液型の保管に関連する物流とコストを大幅に削減ができる。さらに、汎用ドナー血液の開発は、使用期限が近づく血液の無駄を削減することにより、ドナー血液の供給量の増加につながると期待されている。
研究チームは、腸の表面を覆う粘液を分解することによって栄養を摂取するヒトの腸内細菌Akkermansia muciniphilaからの酵素の新しい混合物を発見した。腸粘膜の表面にある複合糖は血球の表面にあるものと化学的に類似しているため、これらの新しい酵素は、「A抗原」と「B抗原」を除去するのに非常に効率的であることが判明した。
研究者らは、数百の血液サンプルを処理するために使用した24の酵素をテストした。これにより、一部の酵素を組み合わせることで「A抗原」と「B抗原」にある糖鎖を効率的に除去できることが判明した。
研究者らは、新しい酵素と酵素処理方法に関する特許を申請しており、今後3年半にわたる新しい共同プロジェクトでこれがさらに進展することを期待している。成功した場合、商業生産や臨床使用を検討する前に、患者を対象とした治験でテストされる必要があるとのことだ。
Top Image : © デンマーク 工科大学