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2022.03.11

知財ニュース

環境移送ベンチャー イノカ、世界初、真冬に水槽内でのサンゴ産卵に成功

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環境移送ベンチャー企業の株式会社イノカは、2月16日、東京虎ノ門にある人工的にサンゴ礁の海を再現した閉鎖系水槽で、サンゴ(種目:エダコモンサンゴ)の人為的な産卵に成功した。日本では通常、年に1度6月に産卵するサンゴを、季節をずらした完全人工環境で真冬に産卵させた事例は、世界初となる。

この研究には、イノカの独自技術である環境移送技術が活用されている。この技術は天然海水を使わず、水質や水温、水流、照明環境、微生物を含んだ様々な生物の関係性など水槽内のさまざまなパラメーターのバランスを取りながら、自社開発のIoTデバイスを用いて、自然に限りなく近い状態で特定地域の生態系を水槽内に再現するというもの。これまで同社では、この技術を用いて人為的に人工サンゴ礁を形成し、サンゴの長期飼育や時期をずらした抱卵に成功している。

今回の実験は、環境移送技術を活用し沖縄県瀬底島の水温データを元に、自然界と4ヶ月ずらして四季を再現することで、日本では6月に観測されるサンゴの産卵を2月にずらすことに成功した。

この実験の成功によって、サンゴの産卵時期を自在にコントロールできる可能性が見込まれており、研究が進めば、年に一度しか研究が不可能であったサンゴの卵、幼生の研究がいつでもできるようになるという。

約4億年前に誕生し、熱帯を中心に生息する動物であるサンゴは、生物多様性の中心とも言える重要な役割を担っており、海の表面積の0.2%に過ぎないサンゴ礁海域には、海洋生物の25%が暮らしている。

また、海岸における護岸効果や漁場の提供、建築材料や生活の道具の材料としての役割を果たし、さらには医薬品への活用など、人間の生活にも欠かせないものとなっており、その経済価値は、年間で推定3750億ドル(日本円で約43兆円)以上にもなると言われている。(※出典:IUCN 〔国際自然保護連合〕Coral Reefs)

しかし、気候変動の影響により、20年後には70~90%のサンゴ礁が消滅すると言われており、生物多様性や絶滅危惧種が注視される現代において、サンゴの保全は重要なテーマの一つと言える。

本研究をきっかけに、こうしたサンゴ保全への知見を深めるとともに、日本が国際的に先進し、イノベーションの源泉となるサンゴについての基礎研究を進展することが期待される。

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Top Image : © 株式会社 イノカ

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