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2021.05.21

知財ニュース

バイデン政権、コロナワクチン特許権放棄を表明—中露に対抗し米製ワクチン2000万回分を外国に提供

バイデン

新型コロナウイルスのワクチンの国際的な供給を増やすため、バイデン米政権が特許権の一時放棄を支持することを表明した。

ワクチンに関する特許はWTOの「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」で定められており、インドや南アフリカなどのワクチンが足りない新興国はWTO(世界貿易機関)に対して特許権の一時的な放棄を要請していた。これに対して、バイデン政権は当初、自国民への接種を優先するため他国への供給に消極的な姿勢を見せており、国内外からワクチンを独占しているとの批判が高まっていた。

放棄実現のためにWTOとの交渉に積極的に参加していくとのことだが、欧州連合(EU)などの先進国は特許権の放棄に反対しており、今回の表明を受けて国際製薬団体連合会(IFPMA)からも「技術者や製造設備、原材料などの問題から、特許を放棄してもワクチンの生産量が増えるわけではない」との声明が発表されている。

また、製薬業界からも投資の回収の観点から強い反発があり、米国のバイオ技術が中国やロシアに流出することが懸念されている。米製薬大手ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は、「ワクチン製造の経験がほとんどあるいは全くない企業は、われわれが生産を増やすために必要な原料を求める可能性が高く、全当事者の安全がリスクにさらされる」と主張した。

コロナ

一連の流れを受けバイデン米大統領は17日、ホワイトハウスで演説し、米国内で製造される新型コロナウイルスのワクチン計2000万回分以上を6月末までに外国に提供すると発表した。既に表明した英アストラゼネカ社製の6000万回分と合わせると、計8000万回分以上を外国に提供することになる。

バイデン氏は「米国の提供量は、ロシアや中国を上回る」と述べ、ワクチン提供をてこに影響力拡大を図る中露などに対抗する姿勢を示した。

バイデン氏は「ロシアや中国がワクチンの提供によって世界で影響力を広げているとの見方があるが、米国は我々の価値や技術革新、創意、米国民の基本的な良識を示すことで、世界を導きたい」と強調。ただ、外国への提供分の大半を占めるアストラゼネカ社製のワクチンは、提供の前提となる米食品医薬品局(FDA)による緊急使用の許可が下りておらず、提供開始のめどは立っていない。

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Top Image : ©Getty Images

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