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2023.02.06

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光を99.98%以上吸収、黒さ世界一の「至高の暗黒シート」─産総研と量研が開発

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産業技術総合研究所と量子科学技術研究開発機構の研究グループは、可視光の99.98%以上を吸収する「至高の暗黒シート」を開発した。触れる耐久性を有する素材としては世界一の黒さを達成しているという。

「至高の暗黒シート」は、明るい場所でも沈む圧倒的な黒さを実現でき、背景の映り込みを防止できるため、視覚表現にこれまでになく高いコントラストを提供できる。

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従来、世界一黒い材料とされてきたカーボンナノチューブ配向体は、あらゆる光を99.9%以上吸収できるものの、もろいため触ると性能が損なわれてしまう難点があった。また、近年では、世界一黒い鳥や蝶などを応用した生体模倣の黒色材料技術なども開発されているが、0.1%を下回る反射率は得られていなかった。

そこで両研究所では、「空洞黒体」の原理に基づき、イオンビーム照射と化学エッチングにより微細な円錐状の凹凸(光閉じ込め構造)を素材表面に形成。凹凸に入射した光が素材の壁面で吸収・反射を繰り返し、反射率がゼロに近づいていくという性質を利用し、2019年に「究極の暗黒シート」を発明した。なお、「至高の暗黒シート」ではさらに素材をシリコーンゴムから素材内部からのくすみ(散乱反射)が少ないカシューオイル黒色樹脂に変更。レーザーポインターの光が消えて見えるほど深い黒を実現した。

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今回開発した「至高の暗黒シート」は、触っても性能が損なわれず取り扱いが容易なほか、表面のチリも簡単に除去できる。同シートほど黒く有用な黒体材料は他に例がないことから、本技術の詳細が米国のオープンアクセス科学ジャーナル『Science Advances』に掲載された。

両研究所では今後、具体的な用途開発や実用化に向けて検討を重ねていく予定だ。ライセンス契約に基づいた素材メーカーへの技術の移転など、光の乱反射を極力抑えたいプロ用途だけでなく、身近な場面も含め、光制御・利用技術の格段の性能向上に貢献していきたいとしている。

プレスリリースはこちら(至高の暗黒シート)

プレスリリースはこちら(究極の暗黒シート)

『Science Advances』研究紹介ページ

Top Image : © 国立研究開発法人 産業技術総合研究所

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