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2021.03.24
知財ニュース
蚊をレーザーの自動照射で退治するマシンをロシアの発明家が開発—蚊による死亡事例の減少を目指す
「蚊」は、夏の嫌な風物詩。たとえ寝ていても、耳元であの羽音が聞こえたら飛び起きてしまいますよね。
音が煩わしい、痒くなるから刺されたくない、という方が多いと思いますが、蚊の恐怖はそれだけではありません。実は、蚊はマラリア・デング熱・ジカ熱などの病気を媒介する衛生害虫で、毎年全世界で70万人以上を死に至らしめているのです。
そんな危険生物である蚊を、マシンビジョンと機械学習で検出し、レーザー照射で焼き殺すという「Raspberry PIマシン」が開発されました。
開発したのは、ロシアの南ウラル州立大学でブレインコンピューターインターフェースを研究しているIldar Rakhmatulin氏。同氏は、蚊が毎年世界中で多くの死者を出している状況を打破するためには新しくより効果的な発明が必要だとして、「ディープラーニングによって蚊を見分けてレーザーを自動照射するマシン」の概念検証用の試作機を開発しました。
このマシンはソニーのIMX219イメージセンサを搭載した専用カメラモジュール搭載し、カメラによって取得された画像情報を機械学習で分析して蚊を検出。移動する物体を追い続けるトラッキング系APIを用いて追跡し、飛行中の蚊の軌道をディープラーニングで予測しながらレーザー照射するという仕組みです。
実際に透明ケースに捕らえた蚊を対象とした試運転が行われており、レーザーの着弾時に蚊が死ぬ確率は50%超という結果が出ているとのこと。素早く飛び回り、一度見失ってしまうとなかなか捕らえることが難しい蚊を自動で退治してくれるなんて…と驚きです。さらに、蚊をレーザー照射で退治するという手法は「風の強い野外でも使用できる」「無人ドローン・人体に直接搭載することで移動時にも対応できる」というメリットがあり、順応性にも注目されています。
Rakhmatulin氏は、1秒間に2匹以上の蚊を追跡して駆除できる、より強力なバージョンを構築したいと考えているそう。精度の上がった「Raspberry PIマシン」が世界に普及することで、蚊による死亡事例の減少が期待できます。
一方で日本でも、肌上に低粘度のシリコーンオイルを塗布することで、蚊が肌にとどまって吸血するのを防ぐ技術が開発されています。
こちらは従来の虫除け剤のように吸血行動を阻止するのではなく、撥水性の高い蚊の脚に着目し濡れ広がる低粘度のシリコーンオイルを肌に塗ることで、蚊が肌に留まりにくくするというアイデア。
蚊の対策ひとつ取ってもさまざまな角度から研究・開発が各国でなされていることがわかります。今後どのような手段でグレードアップし私たちの生活や社会に実装されていくのか、注視していきましょう。