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2021.12.28

知財ニュース

量研、使用済みリチウムイオン電池から、99.99%純度でリチウムを回収する装置を開発―輸入価格の半値以下に

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国立研究開発法人 量子科学技術研究機構(量研)は12月7日、使用済みのリチウムイオン電池から99.99%という超高純度でリチウムを回収できる装置を開発したことを発表した。

国内では、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けてEV(電気自動車)のますますの普及が予想されているが、リチウムイオンバッテリーの需要の急拡大により2027~2030年頃にはリチウムの確保が困難になると予測されている。この問題への対策としては、使用済みLIB(リチウムイオンバッテリー)のリサイクルが最も有力だが、既存の技術ではコストが高すぎるのもまた現状だ。

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そこで、量研の量子エネルギー部門六ヶ所研究所増殖機能材料開発グループの星野毅上席研究員らの研究グループは、新開発の高性能イオン伝導体を20枚積層してリチウムを回収する装置を開発し、リチウム回収コストの評価を実施した。同機構の方式は、使用済みリチウムイオン電池を加熱処理(焙焼)して得た電池灰を水に浸し、溶け出したリチウムイオンを分離膜で精製するというもの。

試験装置では14日間の稼働で、この電池灰浸出溶液に含まれるリチウムの約8割に当たるリチウムを回収することができたと発表。試算によると、2020年度貿易統計によるリチウムの輸入平均価格(1kgあたり1287円)を下回る製造原価で回収できることがわかったという。さらに、高濃度リチウム原液を作れば輸入価格の半値以下での回収も見込めるという。

現在、リチウムを100%海外輸入に頼っている日本においては、本成果は国内資源循環への展望が拓かれる。またリチウムは核融合の燃料ともなるため、リチウム資源の安定確保は、核融合エネルギーの早期実現に向けた重要な課題となる。

さらに今回開発された技術は、リチウムのそもそもの供給源である塩湖かん水からのリチウムの回収も可能にする。同研究機構は今後、「海水からのリチウム回収技術確立、すなわち無尽蔵のリチウム資源の確保を目指して研究開発を進めてまいります」と語っている。

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Top Image : © Getty images

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