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2021.12.10
知財ニュース
スーパーコンピュータ「富岳」が4期連続4冠達成─TOP500・HPCG・HPL-AI・Graph500で世界第1位獲得
理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピュータ「富岳」が、世界のスーパーコンピュータに関するランキングの4つのランキングで世界第1位を獲得した。ランキングの発表は米国で年2回(6月/11月)行われており、富岳は2020年6月より4冠を達成、今回で4期連続となる。
ランキングは、「TOP500」「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」「HPL-AI」「Graph500」の4つで、それぞれ異なる角度からスーパーコンピュータの性能(計算速度や能力)評価を行なっているものだ。
「TOP500」では、同じプログラムで定められた計算をした際の計算速度を競う。計算に使用されるのは、米テネシー大学のジャック・ドンガラ博士によって開発されたプログラム「LINPACK」で、処理する際の計算速度でランク付けする。
「HPCG」では、TOP500と異なる種類のプログラムで計算速度を競う。プログラムは、物理現象のシミュレーションや産業利用などを想定して構築されたもので、実際に使われるアプリケーションで求められる計算速度を評価する。プログラムはドンガラ博士らが提案した。
「HPL-AI」は、AI(人工知能)の深層学習などでの使用を想定した計算速度を競う。AIやGPU(3Dグラフィックスなど画像描写の際に計算処理を行う半導体)などで使用頻度の高い計算法(単精度や半精度)を加味して、計算速度を評価する。新たなプログラムはドンガラ博士が提唱し、理研計算科学研究センターがLINPACKを改良して開発した。
「Graph500」は、多種多様な応用力を持つグラフ解析の性能を競う。グラフとは、頂点と枝によってデータ間の関連性を示したもので、実社会の多種多様なデータから複雑な課題・問題を解析する際に用いられる。Graph500では、ある決まった問題をいかに短時間で解くかを競う。
富岳の本格稼働開始は2021年3月。だが本格稼働以前から実績を残している。2020年にはCOVID-19の飛沫・エアロゾル拡散モデルを構築し、感染リスクの評価と対策に貢献。また、2021年に入ってからは市街地のリアルタイムな津波浸水予測を実現した。本格稼働後も、9月に千葉大学・名古屋大学の研究チームが富岳を用いたシミュレーションで、従来では難しかった太陽の自転構造を再現。その他、気象予測や創薬研究などにも活用されている。
富岳は、4期連続4冠の世界最高レベルの性能を持ちながら、使いやすさを追求している点に特徴を持つ。文部科学省が「「富岳」成果創出加速プログラム」として、社会課題や科学的課題への挑戦を行う研究課題の公募を行っていることもあり、今後その活用はますます進むと見込まれる。日本発での地球課題の解決や宇宙の謎の究明への貢献も期待される。
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