News

2024.11.28

知財ニュース

産総研と入江工研、「吊るさない点滴」を開発―医療機器としてPMDAに登録、在宅医療や災害現場に活用

fig

国立研究開発法人 産業技術総合研究所と入江工研株式会社の共同開発により、「吊るさない点滴」が医療機器として登録された。同製品は電源不要で、輸液バッグを吊り下げることなく点滴を行えるもの。

同装置は、患者の移動制限を大幅に緩和し、災害時医療や緊急搬送など、様々な場面での活用が期待されている。

従来の点滴は、輸液バッグを高い位置に吊るし、重力によって薬液を投与していた。ただ、この方法では患者の移動が制限されるだけでなく、転倒や血液逆流などのリスクも伴う。このような課題を解決するために、電源を必要とせず、重力に頼らない点滴装置の開発が求められていた。

産総研は、医療現場からの「点滴による生活の不自由を減らしたい」という声を受け、入江工研と共同で開発に着手した。産総研の流体制御と計測技術、入江工研の真空技術を融合し、大気圧と真空の差圧を利用した空気加圧技術を開発。これにより、電源がなくても輸液バッグを加圧できるようになった。

fig1

fig2

開発過程では、安定した薬液投与を実現するための課題があった。当初試作した寝袋型の空気バッグでは、重力による点滴と同等の性能を達成することができなかったが、研究の結果、輸液バッグ表面にしわが生じ、圧力が効果的に伝わらないことが原因だと判明。

試行錯誤の末、二つの空気バッグで輸液バッグを挟むサンドイッチ型の機構を開発することで、しわの発生を抑え、重力点滴と同等の吐出性能を達成することに成功した。産総研と入江工研は、共同でこのサンドイッチ型の機構の発明を特許出願し、特許第6980359号として登録済み。

今後は、ユーザーからのフィードバックを元に、更なる携帯性と操作性の向上を目指した技術開発を進めていく予定。

プレスリリースはこちら

Top Image : © 国立研究開発法人 産業技術総合研究所

広告