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2026.01.08

知財ニュース

都産技研と北里大学、ウナギの“脂”をつくる細胞の樹立に世界で初めて成功

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東京都立産業技術研究センターと北里大学の研究グループは、絶滅危惧種であるニホンウナギの筋肉組織から、ウナギの風味や食感に不可欠な“脂”をつくる細胞の樹立に、世界で初めて成功したと発表した。この研究内容は、2025年11月20日付で、Nature系列の国際学術誌である「npj Science of Food」に掲載された。

細胞性食品(培養肉)は、動物や魚から採取した細胞を培養して食肉・魚肉に利用する新しい食料生産技術で、環境負荷の軽減や動物福祉の観点から注目を集めている。牛や豚などでは研究が進んでいるが、魚類における細胞株の整備は極めて限られていた。特に脂肪細胞は風味・食感に直結する要素でありながら、魚類由来の脂肪細胞株に関する研究はきわめて限られており、株化に成功した例はこれまで報告されていないと研究グループは説明している。

一方で、ニホンウナギは日本の食文化に深く根付いた高級魚だが、資源量の減少により絶滅危惧種に指定されている。現在市場に出回るウナギは、天然の稚魚(シラスウナギ)を捕獲して養殖する方法に依存しており、資源枯渇や価格高騰が深刻な問題となっている。

研究グループはニホンウナギ稚魚の筋肉組織から取り出した細胞を長期間培養し、形態的特徴を手がかりに細胞を分離・培養することで、3種類の新しい細胞株を樹立した。これらの細胞株は、120回以上の細胞分裂を経ても安定した増殖能力を維持しており、人為的な遺伝子操作やウイルス・薬剤などを用いた不死化処理なしに無限に増殖する「自然に不死化した細胞株(自然不死化細胞株)」なのだという。

スクリーンショット 2025-12-11 6.13.34 細胞に蓄積された脂質の脂肪酸組成

次に、これらの細胞の性質を調査した結果、脂肪前駆細胞(脂肪を蓄積する成熟した脂肪細胞に分化する前段階の未熟な細胞)であることが明らかになった。細胞は、分化誘導の刺激に応答して成熟した脂肪細胞へと変化し、細胞内に脂肪滴を大量に蓄積。さらに、培養液に脂肪酸の一種であるオレイン酸を添加すると、細胞の増殖を維持したまま、効率的に脂肪を蓄積させることにも成功した。また、細胞株がつくる脂の組成は、市販の養殖ウナギと非常によく似ていることも確認できている。

食肉は、主に筋肉と脂肪から構成されているが、研究グループはすでに筋肉をつくるための筋芽細胞を樹立しており、この研究により「細胞性ウナギ肉」の実現に不可欠な要素が揃ったとしている。今回樹立した細胞株は、ウナギ肉のおいしさや風味に重要な脂の要素を提供できるだけでなく、抽出した脂の産業用途への展開も期待される。

今後は、両細胞を組み合わせた立体的な組織の構築と、ウナギ特有の風味や食感を持つ「細胞性ウナギ肉」の開発を両機関で連携して加速させていく。将来的には、培養環境を整備することで、天然物では難しい「脂ののり具合の最適化」や「品質の均一化」といった、培養ならではの研究開発へと展開していく予定だ。

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Top Image : © 北里大学 海洋生命科学部

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