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2024.08.06
知財ニュース
NTT、eスポーツ試合前の脳波から勝敗を予測する技術を発表―約8割の確率で試合結果を予測、番狂せにも対応

日本電信電話株式会社(NTT)は、eスポーツの試合前の脳波から勝敗を予測する技術を発表した。eスポーツ勝敗と関連する脳波についての詳細は2023年6月16日米国科学誌「iScience」に掲載され、勝敗予測技術についての詳細は2024年7月18日、オランダ科学誌「Computers in Human Behavior」に掲載されている。
同社研究チームは、試合直前の脳波に特定のパターンがあり、それが勝敗と強く関わっていることを発見。これにより、脳波を使って試合の結果を予測できるようになったという。
さらに、従来の方法では予測が難しかった「番狂わせ」のような不確定要素の多い試合結果も、試合直前の脳波データを使うことで約80%の確率で試合結果を予測できることが実証された。
研究ではまず、勝敗に強く関連する脳波パターンを調査するために、eスポーツの格闘ゲームの試合中に選手の脳波を計測した。
試合の勝敗には「戦略判断」と「感情制御」が重要とされており、選手へのアンケートからも、第1ラウンドの直前では戦略判断、第3ラウンドの直前では感情制御が重要であることが分かったという。そして実験の結果、第1ラウンド直前に戦略判断に関わる脳波(γ波)が増大し、第3ラウンド直前に感情制御に関わる脳波(α波)が増大している選手は、試合に勝ちやすいことが明らかになった。
次に、試合直前の脳波データを使って試合結果を予測するモデルを作成し、試合の勝敗を約80%の精度で予測することに成功。さらに、実力が拮抗した試合や番狂わせの試合でも、脳波データを使った予測モデルは従来の方法よりも高い精度を示したという。
これまで、いくつかのスポーツでは、脳の働きと瞬間的なパフォーマンスの関係が調査されてきた。ただ、実際には試合中に脳の働きを計るのは難しく、対戦スポーツでの勝敗と脳の関係は明らかにできなかったという。
同研究により、勝負事に臨む際の理想的な脳状態が分かるだけでなく、人々が様々なシーンでプレッシャーに対処するための方法を模索することが可能になるだろう。
脳波のパターンを分類し、最適な精神状態を見つけることで、将来的にはスポーツや仕事、医療、教育などの様々な場面でパフォーマンスを向上させることが期待されている。
Top Image : ©日本電信電話 株式会社