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2025.06.12

知財ニュース

ispace、ユネスコの文化・言語遺産を月面に輸送―ナノ記憶ディスクで人類の遺産を月へ

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株式会社ispace(証券コード9348)は、同社の欧州法人であるispace EUROPEとBarrelhandとの間で、ユネスコの文化・言語遺産を保存した記憶ディスク「Memory Disc V3」を月面に輸送するペイロードサービス契約を締結したことを発表した。

Barrelhandは、米国カリフォルニア州を拠点に宇宙における経済圏の拡大を目的とした革新的なプラットフォーム企業。

ispace 01 ispace-U.S.が開発を進めるAPEX 1.0ランダーのイメージ画像

この契約に基づき、ispace EUROPEが開発するマイクロローバー(小型月面探査車)に「Memory Disc V3」が搭載される。マイクロローバーは同社の米国法人ispace-U.S.が主導するミッション3(Team Draper Commercial Mission 1)の、一環として、月の南極・シュレディンガー・クレーターを目指す「APEX 1.0」ランダーから月面に展開される予定だ。

「Memory Disc V3」は、直径19mm、厚さ1.2mm、重さわずか1.7グラムという小型の記憶媒体。このディスクには、ナノフィッシュ(Nano Fiche)技術を用いて、約4GB分の現代の象形文字に相当する情報が、原材料であるニッケルの表面に超微細に刻まれている。当初は宇宙飛行士の心理的な支えとなることを目的としてBarrelhandにより考案されたが、現在では、人類の記憶や文化を後世へと継承するための、普遍的かつ象徴的なプラットフォームへと進化を遂げている。

放射線や極端な温度変化、真空といった過酷な宇宙環境にも耐えられるよう、ニッケルが持つ高い耐久性を活かして設計されていて、紙や一般的なデジタルメディアとは異なり、物理的な劣化がほとんど生じないことから、数百万年単位での長期保存が可能。

さらに、最大13万DPI(ドット・パー・インチ)という顕微鏡レベルの超高解像度で刻まれた情報は、極限の環境でも電力やデジタル機器を使うことなく、光学的な拡大だけで読むことができ、まさに、現代版のロゼッタストーンと呼ぶにふさわしい技術だ。現在も開発は進められており、「Memory Disc V3」は、これまでのシリーズの中でも最も洗練されたものだ。

スクリーンショット 2025-06-08 4.03.04 「Memory Disc V3」とディスクに刻まれた情報の画像

2019年、国連総会において「国際先住民族言語の10年(2022~2032年)」の制定が決議された。これは、先住民族問題に関する常設フォーラムからの提案に基づくものだ。

同フォーラムでは2016年時点において、世界で使用されている推定6,700の言語のうち40%が消滅の危機にあると警鐘を鳴らしており、その大半が先住民族の言語であることから、これらの言語と共に文化や知識体系までもが失われるリスクについて指摘している。

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Top Image : © 株式会社 ispace

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