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2023.02.20

知財ニュース

中山大学ら、固体から液体、液体から固体に変化するロボットを開発─生物医学での活用に期待

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中国・中山大学、米・カーネギーメロン大学らの研究チームは、ナマコから着想を得、固体から液体に、液体から固体に迅速かつ可逆的に状態を変化させるロボットを開発した。この研究成果は2023年1月25日付の学術雑誌「マター」で発表されている。

本ロボットは、固体と液体の間を可逆的かつ迅速に変化し、固相では機械強度が高く耐荷重30キロ・秒速1.5メートル超の移動速度を実現。液相では伸長・分割・合体といった優れた形態適応を発揮する。

従来の剛体のロボットは、狭いスペースや小さい角度の移動に適していない一方、柔軟性のある素材でできた「ソフトロボット」は強度が低く、動作も制御しづらかった。そこで研究チームは液体と固体双方に変化できれば機能性を高められると考え、物理的損傷を抑えるために組織の硬さを変化させられる「ナマコ」から着想を得て、本ロボットの開発に着手した。

研究チームは、摂氏29.8度を融点とする液体金属「ガリウム」にネオジム・ホウ素・鉄からなる磁性微粒子を埋め込んだ新しい位相シフト材料「MPTM」を開発した。磁性微粒子の作用で交番磁界(時間と共に大きさと方向が変化する磁界)に反応させ、加熱を促すことで相変化を起こす。なお、磁性微粒子の作用でロボットが磁場に反応し、動作可能になるという。

また、研究チームは、本ロボットでヒトの胃のモデルを用いた実験も実施。ロボットが異物のもとに素早く移動して液相に移行し、異物を包み込んだ後に固相に戻って異物とともに胃から出たり、薬剤を包んだロボットが胃の中で液相に移行して薬剤を放出した後、固相に戻って胃から出ることが示された。

なお、「MPTM」製の小さな人型ロボットを用いた実験では、オリの中のロボットが磁場を利用して液状化し、鉄格子の隙間から流れ出し、再び合体して元の形状に戻ったという。なお、本ロボットは、はんだや導体としての利用や、部品を組み立てる万能ねじとしての利用が可能なことも実証されている。

本研究の成果は、2023年1月25日付の学術雑誌「マター」で発表されている。研究論文の共同著者でカーネギーメロン大学のカルメル・マジディ教授は「今後は、生物医学の観点でこのロボットをどのように活用できるか、さらに追究していく必要がある」と述べている。

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Top Image : © 中山大学

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