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2021.03.08

知財ニュース

衣服にマイクロチップを織り込んで追跡を可能にする「CircularID」を米スタートアップ企業が開発

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アメリカのスタートアップ企業イオンは、衣服にマイクロチップを織り込んで追跡を可能にする「CircularID(サーキュラーID)」をマイクロソフトやH&Mグループなどの協力を得て開発しました。

「ファッション業界におけるサーキュラーエコノミーの実現を促進させること」を目的として開発され、「CircularID」をスキャナーで読み込むと、ブランド名や素材、原産地、価格といった服の“出生証明書”の役割を果たす基礎情報と、服がどのように販売・購入・リセールされてきたかという“パスポート”の役割を果たす情報を確認することができます。

創業者のナターシャ・フランク(Natasha Franck)最高経営責任者(CEO)は「現在、ブランドと顧客の関係は販売時点で終了します。ブランドが製造から廃棄までのライフサイクルを通して商品を管理し循環させることで、その商品の価値を最大限化できるのです」と語る。
「以前から循環型経済に興味がありました。循環型に向けてリセールやリサイクルサービスが多数存在しますが、これらの取り組みをIoT技術を用いて連携させ、効率化できないか、スケールを拡大するためには何が必要かを考えていた時に思いついたのが、個別の製品を特定するためのデジタル上のIDでした」(WWD JAPANより)

例えば、洋服を古着店で販売する際、商品の使用度合はもちろんですが、正規の販売価格や発売時期といった「情報」が重要となります。また、洋服をリサイクルする際も「情報」が不可欠です。衣料品を生地へと作り替えるためには、素材ごとに分ける必要があるため、原料やその組成が正確に分からないとリサイクルするのが難しくなってしまうのです。

しかし、従来の商品タグは購入時に切って捨ててしまうことが多く、縫い付け式のタグでも洗濯しているうちに色褪せてしまい文字が読めなくなってしまう場合があります。

一方、CircularIDの場合は、洋服の生地自体にマイクロチップを織り込んでおり、ブランドがすでに商品管理のために活用するRFIDやバーコードなどに入力されている商品情報を「CircularID」と連携させると、同社が提供するオンライン上のプラットフォームでその情報を確認することができるという仕組みとなっています。過去のブランドラインナップを遡ったりデータを照合したりする手間を省くことができ、よりスムーズなリセールやリサイクルを実現できます。

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また、ブランドは商品を購入したユーザーがどれくらいの期間その服を着用し、着用後にどのように処理をしたかなど顧客の行動データを蓄積できるのが大きなメリットとなるでしょう。時期に合わせて別の商品を組み合わせたスタイリングの提案や、『着用しなくなったアイテムはここで回収しています』といったリサイクルキャンペーンを実施し、リサイクルに協力してくれたユーザーにクーポンを配布するなど、情報の活用方法は様々。消費者とのより継続的な関係性が期待できるでしょう。

「CircularID」は、2019年11月よりベータ版の使用を開始し、正式版のローンチは2021年9月を予定しています。大量生産・大量消費が当たり前になっているこの時代、「CircularID」の導入で企業やブランドがどう変化していくのか、今から楽しみです。

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