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2024.09.05
知財ニュース
帝人、自己組織化するパッチ「シンフォリウム」を発売―再手術リスク低減へ
帝人株式会社は、福井経編興業株式会社、大阪医科薬科大学と、先天性心疾患の患者の課題解決のために共同開発を進めてきた心・血管修復パッチ 「シンフォリウム」を製品化したと発表した。また、帝人のグループ会社である帝人メディカルテクノロジー株式会社が6月12日(水)に販売を開始するとしている。
先天性心疾患は、生まれつき心臓や血管の構造が正常とは異なることにより、血液の循環に支障が出る疾患だ。治療法としては、合成樹脂や動物由来の素材で作られた医療用パッチを埋植し、血液循環を修正する手術を行う。
しかし、埋植したパッチが免疫による異物反応を受けて劣化することや、心臓や血管の組織の成長に対してパッチが伸張しないことによる狭窄が発生することがあるのだという。その場合には、パッチを交換するための再手術が必要になることも多いため、患者やその家族にとって身体的かつ精神的な負担となり、医療者を悩ませていた。
手術の一例(イメージ図)
このような悩みを解決するため、「自分の組織に置き換わることで患者の成長に伴うサイズ伸張に対応できるパッチ」の開発に取り組み、「シンフォリウム」の製品化が実現された。このアイデアは大阪医科薬科大学の根本 慎太郎 教授によるものなのだという。
「シンフォリウム」は吸収性の糸と非吸収性の糸で編んだ特殊な構造のニットを吸収性の架橋ゼラチン膜で覆い、一体化させた柔軟なシートだ。このニット構造は、独特の編目構造を持ち、手術中の縫合や埋植後の血圧に十分耐えうる骨格として機能するのだという。
手術によって心臓や血管に縫着された後に、まず架橋ゼラチン膜が、次に吸収性の糸が徐々に分解されながら、非吸収性の糸を含むように自己の組織が形成されていく。
このような自己組織の形成によって、身体の成長に伴った伸張性を持つことが可能になるため、これまでの治療で課題とされてきた異物反応による劣化と、身体の成長への非追随性で発生する再手術リスクの低減が期待されているとのことだ。
同社は、「シンフォリウム」の海外での上市を目指し、米国FDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)などの規制当局との協議をはじめとして、米国や欧州などにおける製造販売承認に向けた活動を行っていくとしている。
Top Image : © 帝人 株式会社